レビュー一覧に戻る
スーパー・チューズデー ~正義を売った日~
2012年3月31日公開

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~

THE IDES OF MARCH

1012012年3月31日公開

mug********

4.0

ネタバレラストシーンの解釈で話は180度変わる

ラストシーンではスティーブンが無表情でカメラの前に立ち、何かを話そうとする所で突然終わってしまう。 補佐官としての当たり障りの無い勝利インタビューと解釈するならば、この映画は政治の裏世界で青年がある種の覚悟を学んでのし上がっていく話となり、単純なドロドロとした政治への批判で終わってしまう。 それにしてはどうも腑に落ちない所が多々あり、ひょっとしたらスティーブンはカメラの前で全ての真実を告白し、モリス知事を告発したのでは無いだろうか? 確かに、ポールに解雇されたスティーブンは怒りに任せて対立候補に寝返ろうとした。あっさり断られてしまうが。。この時点では政治的復讐、生き残りを賭けた戦いを挑んでいたのだろう。 しかし、その後女性研修生が自殺してしまった事実を知り、あるいは考えを改めたのではないだろうか。車の中で研修生からの留守電メッセージを聞き、自らに助けを求めた悲痛な言葉を耳にし、その間も自らの保身や解雇された腹いせに奔走していた訳で、こんなに自分を許せない事はないだろう。 同時に、政治的な謀略に明け暮れる対立候補陣営、外面ばかり良いが身内の研修生に手を出して自殺に追い込んでおきながらしらを決め込みなんの責任も取らない、ほんの前日までは崇拝すらしていたモリス知事を許す事は出来なかっただろう。 そうして思い出されただろう。 ポールは汚い政治の世界で唯一守られなければいけないものは誠意だと言っていた。 こんなに誠意のない事は無いではないか。 しかし、手元には糾弾に耐えられるだけの確かな証拠も確証もない。 そこでスティーブンはモリス知事を呼び出し賭けに出る。 ありもしない遺書を材料に知事に取引を持ちかける。 ポールを解任し自分を自分を補佐官に任命すること、代議員票に大きな影響力を持つ黒人議員を副大統領候補に指名すること。 いずれも本来知事には到底飲めないことだ。特に副大統領候補指名の件は、途中でしつこいくらいに伏線として描かれている。 しかし、知事は渋々ながらなんとこの条件を認めてしまう。 知事自らが事実を認めてしまったのだ。 そう、スティーブンは汚い取引を持ちかける事で事実を確かめたのだ。 こうして真実にたどり着いたスティーブンは、知事の事実上の選挙勝利宣言の会見の直後、全てをさらけ出そうとカメラの前に立ったという訳だ。 知事のスピーチを最後まで見届けることもせずに、無表情のまま途中で会場を後にしたのも頷ける。自分の思うままに事が運んで喜んでいる人間の表情には見えない。 こうする事がスティーブンとしての誠意の見せ方だったのだろう。 遺書は無いので物的証拠がない事に変わりはないが、告発後はポールを突然解任し、意中にない議員を副大統領候補に指名した事でメディアの追求をかわすことは出来なくなるだろう。 知事との取引条件にポールの解任を挙げたのは、野心を全面に出す事で本心を隠す意味もあったが、誠意の意味を教えてくれたポールを守る意味も有ったのではなかろうか。 そして半ば真実を知りつつも、本当は知事が政治的野望を捨てて罪を認める事を願っていたのではないだろうか。 最後のあの無表情にはそうした無念があらわれていたように感じた。 クルーニーは多様な解釈が可能なラストシーンを残したが、そういうの、、嫌いじゃない。

閲覧数3,806