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隣る人
2012年5月12日公開

隣る人

852012年5月12日公開

god********

5.0

毎日を「隣る人」と共に迎えられる幸せ

子供はまだ人生を上手く渡る術を知らない存在だ。 素直で純粋で正直であることは時として、相手を容赦なく傷つけてしまうこともある。 本作の子供たちも同様だ。 幼心に宿る、自らの置かれた特異な状況や環境への疑念や不信感。 だからこそ、ある子供は親の愛を渇望しているために、わざと手を焼くようなことを仕出かし、大人たちの気を引く。 また、ある子供は大人たちに反抗し、見栄を張って強がり、自分の心を何とかコントロールしようと試みている。 本作で焦点が当てられているのは「むっちゃん」と呼ばれる女の子だ。 生意気盛りで反抗的だが、常に孤独を身にまとっているのをカメラは逃さない。 その姿はまるで傷ついた心を見透かされたくないため、他人が近づいてくるのを拒んでいるかのようである。 彼女には実の親がいる。 それが周囲の子供との違いであり、優越感であり、そして唯一の心の支えだと彼女は思っているのだろう。 しかし、いざ母親に会ってみると互いにどう接すればよいのか分らない。 その戸惑いや苛立ちがタバコを吸う母親から痛々しいほど伝わってくる。 明らかに外見も性格もよく似た「親子」なのに、心は1度も通い合うことはない。 子供にとって1番よい環境とは何なのかを、考えさせられずにはいられない。 「母親とこれで会うのは最後になると思うから良かった」とむっちゃんが述べる。 実の親がいるという優越感が失われ、そして自分の本当の居場所を自覚したむっちゃん。 そんな彼女の誕生日を「隣る人々」が集って祝福してくれる。 そこで見せる彼女の安堵の表情にどれだけ救われることか。 大人たちもがき苦しんでいる。 「責任担当制」とは、「親」とは、そして子供にとって最善の方法とは一体何なのだろうか。 正しい答えなどない問題に直面した大人たちが模索した末に差し込む一筋の光に涙が止まらない。 美しい朝焼けと共に、今日もまた1日が始まる。 朝食を作る音が軽快に響き渡り、やがて朝の騒々しさがやって来る。 そんな「日常」が毎日やってくる幸せ。 そして、そんな日常を「隣る人」と共に迎えられる幸せ。 そんな当然の光景に、改めて感謝したくなる。

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