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ほかいびと 伊那の井月(せいげつ)
2012年3月24日公開

ほかいびと 伊那の井月(せいげつ)

1192012年3月24日公開

ymo********

1.0

カラオケの映像です

幕末から明治にかけて信州・伊那谷を中心として活動した放浪俳人である井上井月の姿を描きます。 この井上井月につきましては、出自も含めてわからないことが多いのですが、物語においては、”一所不在”を貫き通し、世話になった家には俳句を詠んで、その礼としていたことから、井月の魅力とそれを受け入れる風流風雅を好む伊那谷と時代の寛容さがあったのでしょう。そのことが井月を受け入れる素地になっていたようで、魅了された井月が30年もの長きにわたり、その土地に居続け、逆に言えば、この土地以外では生きられない人間だったのかもしれません。 しかし、物語におきましては、特に心情面において、”~みたいでした””~はずです””ではないでしょうか”等々、わかりもしないことを都合良く推測して作るお話には些か辟易とさせられます。 また、日記にはもてなしを受けられなかった家に対して「風情なし」「粗末」「酒なし」「風呂なし」と書くことからわかるように井月自体の資質にも問題があったにもかかわらず、井月を受け入れないのが”許されない時代となりました”と、その責めを時代に押しつけては、本当の人物理解に繋がるとも思えません。 作品は、ドラマ部分とドキュメンタリー的な部分が混じり合う形で作られておりますが、出来はあまり良くありません。要は、バラエティー番組の再現ドラマのようです。特に気になるのが、その綺麗さです。主演の田中泯さんの手の綺麗さが着物汚さと対照的に目立ちます。まあ、そんな細かいことは、作品の本質ではないのでしょうが・・・。 やはり、問題は俳句を取り扱った場面でしょう。 作品には、伊那谷の四季を詠った俳句にあわせての映像が、数多く織り込まれておりますが、俳句と映像を組み合わせることにより、その俳句が描く世界を限定し陳腐なものに陥れます。まるで、カラオケの映像のようです。 この作品のナレーションを担当したのは樹木希林さんですが、作品と良く合っております。近年の樹木希林さんの滑舌の悪さが気になっておりましたが、この作品では、その様なことはないようです。 井上井月を知る取っ掛かりには良いのかも知れませんが、それだけです。

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