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桐島、部活やめるってよ (2012)

監督
吉田大八
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  • みたログ 8,166

3.99 / 評価:5982件

目を背けていられた己のアイデンティティ

  • enj******** さん
  • 2012年8月16日 17時31分
  • 閲覧数 8579
  • 役立ち度 153
    • 総合評価
    • ★★★★★

本人がいないのに、会話の中心はいつも「桐島」。
自分の世界なのに中心に居るのはいつも「桐島」。
下の人が言っている様に、自分の人生なのに主人公は「桐島」。

「桐島」が居たからこそ成り立っていた部活、ステータス、自信。
「桐島」を通してたから安心でき、目を背けていられた己のアイデンティティ。
「桐島」がいなくなっただけでぐらつく友情。
「桐島」が居なくなって急にのしかかる責任。

社会人で言うとさしずめ、「社長、いなくなったってよ」って事だろう。
信頼してればしてるだけ大問題である。

社会人と違うのは、それがアイデンティティに目覚めたばかりの、
まだ自分一人で立っていられない子達に襲ってきた事である。
急に己と向き合わなければいけなくなった彼らは
「桐島」を言い訳にして逃げたり迷ったり怒ったり目を背けたり。
でもどこにも答えはないのである。
「桐島」の携帯にかけても、そこに己のアイデンティティはない。
耳に聞こえてくるのは桐島への着信音ではなく、かつて好きだった野球の音。

この映画のメインは神木君だが、
「桐島」がいなくなった事でわかりやすく変化していくのは宏樹だった。
(でも神木君の演技は群を抜いていて他が霞むくらい神の領域でダサくて凄かった)
前田と宏樹、決して交わることのない別種の存在の2人が
おだやかに会話する屋上のシーンが良かった。
(その前の生徒会オブザデッドもサイコーだったけど)

前田の「あいつは汚いっていうけどね、それはあいつの主観だし」
なにげないこの一言、意外と効いている。
結局他人から引かれてもバカにされても
自分の好きなものを素晴らしいと思えてる奴は最強なのだ。
自分を持ってる奴は強いのだ。
宏樹の「あ、おれってちっちぇえな、ダセえな」とでもいう様な突然の涙も胸にきた。





学校を「あの頃は狭かった」「狭い世界で生きていた」と皆言うけれど
映画オタク、ファッションリーダー、バレーのエース、音楽好き等
あれほど多種多様な人間が一箇所に集まって生活する場所は、他にはないだろう。

今自分は幸せな事に、夢を叶えて好きな事を仕事にしているが
周りにいるのは自分と同じものが好きな仕事仲間たちであり
もしここで例えばパリコレのオサレな世界に放り込まれたら大変オドオドすると思う。
「学校」とは狭いけど、ものすごく大きな世界だな、と思う。

そういや自分の高校時代の友達たちは
何故かドイツに憧れて、ドイツ語を一人で勉強してた子はドイツ人と国際結婚し
劇団四季に憧れていた子は東京で舞台役者になり
漫画家になりたくて画を描いていた地味な子は夢は破れたがイラストレーターで
学校のマドンナは早々に結婚し二児の母、
好きなものを好きと言い続けた私は好きな事を仕事にしている。

高校で培われるアイデンティティは意外とバカにできない。

話がそれたが、「桐島」がいなくなった日に進路調査票が配られたのは、
「ハイみんな、自分の人生考えようね~っ」の合図だったのだろう。
「桐島」を思って携帯を取り出そうとするとポトリと進路調査票が落ちる。
細かい所がじわりと上手い。

失恋をした、部活が上手くいかない、何をしていいのかわからない・・・けど
「僕らはこの世界で生きていかなければならない」。

「桐島」にすがっていた時間は終わったのだ。





言葉にできない感動を胸に映画館を出ようとしたらポスターが目にとまった。
神木君が覗いているカメラは、もしかしたら桐島って事なのかな。

詳細評価

物語
配役
演出
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音楽

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  • コミカル
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