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桐島、部活やめるってよ
2012年8月11日公開

桐島、部活やめるってよ

1032012年8月11日公開

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5.0

ネタバレ夕日が照らす宏樹の空っぽな中身、それを映し出す残酷な8mmのレンズ

群像劇やスクールカーストを描いた作品としてみても面白い本作。 でも、ストーリーの中核は宏樹だと思います。 夕暮れの屋上から、真っ暗な野球のグラウンドを見ながら宏樹が電話をかけるラストシーンは本当に素晴らしいと思いました。 霧島がいなくなったことで、宏樹にとって当たり前の生活が当たり前ではなくなり自分自身に疑問をもつきっかけとなります。 自分は霧島にとってどういう存在だったのか?自分はいったいなんなんだ? スポーツもできて彼女もいる、でも自分自身には夢中になれるものが何もない事に宏樹は薄々気づいていきます。 野球部のキャプテンがドラフト会議が終わるまでは野球を諦めきれない姿を見て、自分にはないものを感じ取ったのだと思います。 今まで断り続けてきた練習試合への参加を自分で言い出しかけたところから、彼の変化を感じます。 そして、夕暮れの屋上のシーン。 8mmを映画部の前田に向けてふざけてインタビューをします。 「将来は映画監督ですか?」「女優と結婚ですか?」これが宏樹にとっての成功のイメージなんだと思います。 それに対して前田は、ただ自分のとった映画が自分の好きな映画と一瞬でもつながっていると感じられることが嬉しいんだと真剣に語り、屈託なく笑います。 そこで、宏樹の価値観は決定的に崩れ落ちます。 前田のことを心底羨ましいと感じたかもしれません。 そして、逆に前田から8mmレンズを向けられる宏樹。 前田が宏樹にレンズを向けられているときに「逆光、逆光」と言っていることから、宏樹が真正面から夕陽に照らされていることが強調されます。 夕日は、宏樹の空っぽの中身を残酷なまでに照らし出します。 カメラを向けた前田が「やっぱりかっこいいね」と言いますが、宏樹にとっては自分が上っ面だけの存在だと言われているようで、辛くなり顔を伏せます。 そしてレンズを向けられることに耐え切れずに涙を流して屋上を立ち去るのでした。 野球グラウンドを見ながら霧島に電話をする宏樹。 彼が何を話すのか、想像を掻き立てられる素晴らしいラストシーンでした。

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