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ハングリー・ラビット
2012年6月16日公開

ハングリー・ラビット

SEEKING JUSTICE

1062012年6月16日公開

バツイチ王子

4.0

オレがウィルならどちらを選択しただろうか

妻が暴行され、心と体に深い傷を負った 犯人を八つ裂きにしたいが、誰かわからない 行き場ない怒りと、遣る瀬無さに苛まれる 「犯人を知っている、殺してやろうか?」 そんな時、見知らぬ男サイモンが見透かすように提案する 受け入れるか、それとも断るか それが、本作の主人公 ニコラス・ケイジ演じるウィルが置かれた状況だ そのいずれかの選択をしたことで 目に見えない強大な思惑に巻き込まれていく こんな、重苦しいシチュエーションから始まる本作 なかなかサスペンスフルな展開で 途中謎解きが停滞し、ダレた感はあれど 追い詰められた男の必死さが溢れ、ハラハラが持続する 敵・味方、善・悪 で単純に分けられない組織や人物が 思惑を表に見せず、そのイデオロギーに従って暗躍する 果たして、ウィルは妻を守れるのか そして、どのような選択をするのか というお話だ まず、この設定がなかなか刺激的 人間の迷いを突いた、厳しい選択を強いるからだ 大事なものが傷つけられたとき 死の復讐をするか、それとも堪えるか 目には目をというハムラビ法典にあるように 被った損失に見合う償いを求める行為は、ある意味公平だ しかし、更なる復讐の連鎖を産み出すやもしれぬ 昨今導入された裁判員制度もそうだ 司法が下す判決に、市民的感覚のかい離を反映させ 結果的に、厳罰を求める動きになっている 愛する妻の暴行に対し復讐を考えぬ者などいない しかし、死をもって償わせるほどだろうか その答えは今のところ持ち合わせていない だからこそ、復讐を望む心とそれを望まぬウィルの葛藤が こちらにヒシヒシと伝わってくる どちらを選んでも苦しい、厳しい選択がそこにある 悩んだ末に、ウィルが選んだのは復讐だった しかし、暫くしてサイモンは重い見返りをウィルに求める オレだったらどうするのか そんなことを考えながら、眉間に皺を寄せて ウィルという男の生き様を見守る サイモンの哲学もわからなくもない カルトな思想でマイノリティなだけで、歴史上においても珍しくない 人間の強さと弱さ、貸し借り、正義と悪 こういう表裏一体の揺さぶりは面白い 主演のニコラス・ケイジは多彩な役を演じられるお見事な役者だ 「ザ・ロック」では勇敢に闘う男だが 「リービング・ラスべガス」ではダメ男となる 本作では序盤、ちょっと冴えないヘタレな高校教師だったウィル それが途中でキレたように、警察顔負けに有能な男となって悪に対峙する この二面性がなかなか面白い 一つの映画で、どちらの役も説得力をもって演じられる俳優はそういない ウィル役には、彼が適役だった ウィルの妻役はジャニュアリー・ジョーンズ 「アンノウン」で見初めた、凛とした芯の強さは健在だ ただ、話の展開上、より弱さが垣間見える女優さんが良かった その方が、クライマックスでより盛り上がったと思う そして、サイモン役のガイ・ピアーズのクールな振る舞いは なかなかスタイリッシュだった 坊主頭も良く似合い、若き頃のブラッド・ピットを思わせる ただ、話としてはどこかで見たようなもので それほど新鮮味はなかったな 遊びを全く入れないこともあってか、とても生真面目な作りの映画だった それゆえに、謎が解けても爽快とはいえず もっと、力を抜いた作りでも良かった気がする 蛇足だがちょっと面白かったのが、舞台となったニューオリンズらしさだ ハリケーン・カトリーナで廃墟になったビルがあったり ガソリンスタンドのオヤジや、刑事が見せる気質がそれらしく Big Easyとあだ名される街の、陽気な気質も垣間見える 「ニューオリンズ・トライアル」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 「イージーライダー」では旅の目的地と、独特のおおらかさも感じられる サスペンスらしい雰囲気はラストまで遊びなしに継続する ラストの含みを持たせるのは常套手段だ 身近にいる大事な誰かが、万が一被害にあうことを想像したら 性犯罪の撲滅へ厳罰化を!と考えるのも、理解できる だが、犯人が重い量刑で裁かれたとして もしくはその死をもってして 被害者や家族が、それによって救われるだろうか 結局、刑罰は犯罪再発の防止、抑制の一手段であり 決して、被害者への償いにはなっていないように思う 誰かに復讐を行えば、その報いを必ず受ける ウィルは、どうやって折り合いをつけるのか、つけられるのか ウィルの姿に自分を重ね、物語に入り込めたオレは 息苦しくも、堪能した 葛藤の行く末は、なかなか見ごたえがあった

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