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Tメン (1947)

T-MEN

監督
アンソニー・マン
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3.80 / 評価:5件

緊迫感に富んだ潜入捜査もののノワール

  • eig******** さん
  • 2021年5月19日 11時34分
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    • 総合評価
    • ★★★★★

今回シネマヴェーラで特集上映されたノワール群のなかでは、リチャード・フライシャー監督の『罠を仕掛けろ』(49)(Yahoo!にも映画.comにも項目がない…泣)と姉妹編のようなそっくりの冒頭部をもつ、アンソニー・マン監督の贋札犯罪捜査物。
監督は別だけど、どちらもブライアン・フォイのプロダクションで、イーグル₌ライオン・フィルムの映画なので、たぶん直接の関連性があるのだろうと推測される。『Tメン』がイーグル₌ライオンのノワール第一作なので、本作の成功で味をしめて、その後も同種の枠組みで作品を続けたということなのだろう。
なんにせよ、財務省(The Department of the Treasury)の捜査官(なので、T-men)を扱った映画で、冒頭に当局への撮影協力の謝辞と「紙幣偽造は犯罪です」との警告を入れるのは、当時のお定まりだったらしい。
本作ではどうやら本物らしい財務省長官が登場して、前説を担当している。

『Tメン』と『罠を仕掛けろ』は、どちらも財務省の潜入捜査員を扱った映画でありながら、アプローチにはずいぶん差があり、こういうところに監督の個性はでるのだなあと思わされる。

『罠を仕掛けろ』では、犯罪者側の視点も相応に描かれるし、そもそも出てくる人物の正体が何者か、誰が主人公かすら最初は観客にもわからないため、ワルかと思ったら実は捜査員だったりと、客も一緒に騙される仕掛けとなっている。話がどこに落ち着くか全くわからないスリルとサスペンスがあり、それがぐいぐいと物語を引っ張っている。

一方『Tメン』では、潜入捜査員側に視点は固定されている。ナレーションが多用され、語り口はセミドキュメンタリータッチ。しょうじき出だしはかなりとっつきにくく、静的で情報量過多な描写が続くが、その代わり囮捜査官の双肩にのしかかるプレッシャーと息苦しさがひしひしと伝わってくる。こちらのスリルとサスペンスは、もっぱら「捜査官はいつ身バレするか」の恐怖感だ。

『罠を仕掛けろ』でも本作とそっくりの身バレがあったが、デヴィッド・ニーヴン似のおしゃれ中年捜査官は、なんとか危地を脱した。総じてノリは活劇調で、官憲側の活躍にはある種の安心感がある。
一方『Tメン』の世界観は非情だ。失敗すれば、敵にも味方にも死が待ち受ける。ギャング一味におちゃらけ担当がおらず、常に空気感がひりひりしているうえ、しかもまあまあ容赦なく制裁が行われるので、古い映画ながら終盤の緊迫感はすごい。
ついに仲間サイドに大きな犠牲が出たあと、主人公の捜査官オブライエンにも絶体絶命の事態が待ち受ける。にっちもさっちもいかない袋小路から、どうやって彼は脱出するのか……? 思わず息をのんで釘付けになってしまった。
この展開、意外と思いがけない助け舟(?)が出されるのだが、しょうじき全く想像していなかったので、それなりにびっくりしたし感心もさせられた。

画面づくりに関しては、総じて静的でストイックな引きの描写が多いのだが、随所に凝った美しい技巧的カットが(やけに目立つ形で)挿入されているのが特徴といえる。
特に、冒頭のタレコミ屋が殺される一連のシーケンスでは、光と影の効果が「必殺」並みのデコラティブな仕掛けで追求されていて、アンソニー・マンのノワールのなかでも屈指の「しびれる絵づくり」になっている。
その他、コップを落としてギャングにアッパーをかます動きを真横から撮ったカット、潜入捜査官の夫の身バレを察したかのような絶望ぶくみの新妻のアップ、スチームバスでの緊迫した語らいとその後の凄惨な殺しのシーン、洗面台の裏に隠した贋札の原板を隠れてとろうとするオブライエンの超俯瞰カットなど、忘れがたいシーンがたくさんある。

全身から緊張感を漂わせる主役のデニス・オキーフ、相棒のアルフレッド・ライターは好演。首領の秘書ジェーン・ランドルフの場違いな別嬪ぶりは印象的。得体のしれない気持ち悪さがこたえられないギャング、ブラウニー役のジャック・オーバーマンの奇顔も忘れがたい。ちなみにIMDb見たら、この人1949年には死んじゃってるんだけど一体どうしたんだ?

若干、ナレーションの多用が興を削ぐ部分も否めないが、この手のアンダーカバーものでは、じゅうぶん成功した部類に属するノワールではないかと思う。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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