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ただ君だけ
2012年6月30日公開

ただ君だけ

ONLY YOU

1052012年6月30日公開

mos********

5.0

役者も演出も筋もいい

薄幸が鼻につくことがある。 湯を沸かす~は薄幸キャラクター総出で押しまくる。 個人的には臭すぎて無理だった。 魚とおなじで、その臭み耐性には個人差がある。 魚ダメな人は、魚介ソーセージでも無理である。 が、調理には巧いのと拙いのがある。 拙いから薄幸が鼻につく、わけでもある。 がんらい薄幸はドラマの重要なエレメントでもある。 薄幸でシンパシーをかせぐ方法が、だめだと言うなら、創作ができない。 巧く薄幸してくれと言いたいのである。 ジョンファは目が見えない。 すなわち薄幸だが、純心できらきらしていて、薄幸がぜんぜん臭わない。 こんな理屈は通じないことは解っているが、ハンヒョジュが出てくれば、納得できる。 駐車場管理の小ブース。そこへ、とても鮮やかに、映画的に、登場する。 俳優の魅力は、ときとして理屈を超える。 さらにチョルミンのキャラクターが薄幸臭を完全に追いやる。 かれは殺伐とした世界に生きている粗忽な男である。そこに、まるで天使のようなジョンファがあらわれる。 この天使の喩えは大仰とはいえない。 荒々しい世界で、ぜったいに守り通さなければならない、ピュアなもの──という使命感を彼に植え付けるからだ。 その使命感とは、愛にほかならない。 人の温かさを知らずに生きてきた寡黙なアウトサイダーと、盲だが天衣無縫な心根の女が出会い、ふたりが何とかして俗世の荒涼を生き延び、愛をはぐくむ顛末が、山あり谷ありの曲線で描かれている。ものすごく巧い。 元ネタはチャップリンの街の灯だそうである。どうやったらこうなるのか。その凄まじい翻案力。風が吹いたら桶屋が儲かった──みたいなもんである。 情報によると吉高由里子と横浜流星でリメイクされ2020秋公開だそうである。 うーむ。うーむとは眉につばを付けたときの擬情語である。

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