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夢売るふたり (2012)

監督
西川美和
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3.33 / 評価:1131件

解説

『ディア・ドクター』などで高評価を得た西川美和監督がメガホンを取り、松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺に手を染める夫婦を演じる異色のラブ・ストーリー。小料理屋を営む夫婦が火事で全てを失ったことから始めた結婚詐欺を通して、複雑で深遠な男と女の関係を描き出す。主演の二人に加えて、結婚詐欺に引っ掛かる女たちを演じる田中麗奈や鈴木砂羽、木村多江のほか、以前西川作品に出演した香川照之や笑福亭鶴瓶などが共演。うそをテーマに人間の業をえぐり出す西川監督らしいストーリーと、豪華キャストによる演技に期待が持てる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

東京の片隅で小料理屋を営む貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)。店は小さいながらも順風満帆だったが、火事で全てを失ってしまう。ある日、貫也が常連客と一夜を共にし、すぐに里子の知るところとなるが、里子は結婚詐欺で金をだまし取ることを考案する。結婚願望の強いOLなど寂しい女たちの心の隙につけ込んで、店を再開するための資金を稼ぐ二人。しかし、夫婦の関係に影が差し始め……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2012「夢売るふたり」製作委員会
(C)2012「夢売るふたり」製作委員会

「夢売るふたり」喪失と絶望を抱く者の心に寄り添う、ねじ曲がった心理サスペンス

 惨めな想いを抱えた淋しい女性たちが、誠実で優しい料理人の自己をさらけ出す言動にうっとりし、ついつい夢を託す。影で糸を引くのは彼の妻。それは店を全焼させ、困窮した夫婦が再起を懸けた資金繰りであり、騙された実感もないまま輝くことを願う彼女たちの背中を、ほんの少し押すだけの謀(はかりごと)。夫婦役の阿部サダヲと松たか子から、阿吽(あうん)の演技を引き出す西川美和の寡黙な演出も相俟って、滑り出しは娯楽性豊かだ。

 コン・ゲームは導入にすぎない。好いた惚れたの季節をとうに過ぎ、日常という戦場で同士となった妻と夫の間を隔てる、どす黒い河の混濁した流れが早まっていく。うしろめたさを重ね、屈折した関係を維持する妻が依って立つ正義は何なのかと、ロジックを求める者には感情移入など程遠い。女性の視座が中心ではあるけれど、「生活」への脅えを抱いたことがある者なら分かるはずだ。それでも生きていく覚悟を決めた人間の理不尽さを。

 他人同士が暮らしを共にするとき、沈黙が不確かな絆をつなぎとめることがある。夫の無理解が一線を超え、妻のプライドを踏みにじってからの展開には、西川美和の凄みをまざまざと見せつけられた。もはや内面のゆらぎどころではない。激しい感情の大波が黙して押し寄せるスペクタクルと化す。松たか子は深い闇を湛えた暗黒の瞳を微動だにせず、冷たい情念を表現してみせる。

 西川映画が似ているもの、それは人生だ。一筋縄ではいかず、可笑しくて悲しくて複雑で曖昧模糊としている。これは、計り知れない喪失と深い絶望を抱く者の心にそっと寄り添う、極度にねじ曲がった心理サスペンスだ。(清水節)

映画.com(外部リンク)

2012年9月6日 更新

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