レビュー一覧に戻る
ムカデ人間2
2012年7月14日公開

ムカデ人間2

THE HUMAN CENTIPEDE II (FULL SEQUENCE)

R18+912012年7月14日公開

kot********

5.0

わりとマジで感動作だと思う。

チビ、デブ、ハゲ、ブサイク、メガネ、コミュ障、喘息、変態、パパから性的虐待、ママから精神虐待、裏返しのマザコン、ご近所になめられ、仕事場でなめられ、ウンコたれ、自閉症、異常性癖、異常オナニー、短小、血尿、童貞。 これほど不憫な主人公が他にいるだろうか…。 『ジョニーは戦場へ行った』の主人公でさえ、両腕・両脚・顔を失って、話すことさえできなくても、過去の美しい記憶に浸ることだけは出来たのに。 本作のマーティンは、きっと生まれてから一度も、良い想い出なんかないだろう。 「みんながボクをいじめて、人生でいいことなんて、ひとつもなかったし、いつもみじめな気持ちになるけど、ボクだって、あこがれの『ムカデ人間』のヨーゼフ・ハイター博士のようにムカデ人間をつくってみせるぞ〜」 という、マーティンの一生懸命な姿を、誰が責めることができようか。 むしろ、彼のムカデ人間作りを応援したくなってしまう。 だって、彼は、自分を虐めてくる人間に仕返しをしたいわけでもなく、ただただ、唯一の心の慰めであるムカデ人間を作ってみたいだけなんだよ…。 それが、結果的に人を傷つけてしまうだけ…。 技術もつたないから、余計に痛い思いをさせてしまうし…。 ただ、彼は、小さな子供には優しく微笑みかけるし、お腹の赤ちゃんには神秘性を感じているし、本当は心の優しい人なの…。 あぁ、なんて切ない話なんだろう。 半笑いながらも、わりとマジで感動するのは、マーティンほどではないにせよ、自分の「負け犬の心」に響いてくるからだろう。 ラストカットの解釈を「あこがれは失敗に終わってしまい、その罪にも気付かない」としても、「すべては妄想であり、ただ生き地獄が続く」としても、これほど哀しい不条理の物語はなかなかない。 前作をメタ構造に用いながら、ビジュアルを一変させた、グロテスク・アート嗜好のモノクロ映画。 ハイコントランストの映像が、毒々しい美術を引き立たせる、ストイックな画面構成。 主人公マーティンは呻き以外の言葉を発しないし、他のセリフも極めて少ない。 サイレント映画のような、映像の驚きで観客の期待に応える作品だ。 インディーズ映画の続編として、これほど見事な飛躍もなかなかないだろう。 トム・シックス監督の脚本・演出が、冴えわたる。

閲覧数5,041