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みなさん、さようなら
2013年1月26日公開

みなさん、さようなら

PG121202013年1月26日公開

kyo********

5.0

共同体と向き合う。これぞ「文学映画」

素晴らしい作品である。 日本文学を映画化するならこのように作らなければならないというお手本を見せられた。「文学映画」ともいえるし「映画文学」ともいえる。 この監督は現代映画であるなら必ず強い社会性(リアリティ)を背景にするし、歴史映画であるなら歴史的実存(リアリティ)の尊重を欠かさない。深みがあり緩みがないのだ。 ここでも一人の若者の「自立」を描くふうを装いながら、国家や共同体という普遍の問題をも示唆している。 住宅団地は昭和から平成にかけての栄枯盛衰を象徴する都市風景である。 それをドキュメント(記録映画)風な映像で描写し、静かに物語を進める。 失った共同体を再構築したのが住宅団地。その重力のなすがままに中卒の主人公は団地にいつく。そこに人生の愉悦を求める。 日本の津々浦々には無数の共同体が存在する。会社法人など契約的共同体、宗教団体や政治結社、あるいは在日朝鮮(韓国)人など外国人コミュニティや沖縄県人、アイヌ人社会などをこの住宅団地のメタファにもできる。 この映画はそこで語られるのかもしれない様々な言葉をつなぐ。 その言葉ふるまいに対して「外部」のものはどう受けとめたら良いのだろう。それを考えさせられる。 そしてまた、それら共同体の当事者がどう「外部」と対面し、浸潤し、調和してゆくかの道筋も示される。 終盤に過去の話へ唐突に切り替わる。物語が激しく動く。ユーモアやアクションも取りそろえて退屈させない。 100人余りいた中学の団地仲間は誰もいなくなる。最後の一人となった主人公がようやく団地から抜け出るラストシーンは感動的だ。

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