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ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド (2012)

MARLEY

監督
ケヴィン・マクドナルド
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4.24 / 評価:45件

美しく切ない歌を歌う宗教家であり革命家

  • サンゴ さん
  • 2018年9月23日 15時18分
  • 閲覧数 319
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

昔バックパックを背負ってアジアを長旅していたことがある。
バックパッカーの集まる安宿ではたいていどこでもボブ・マーリーが流れていた。
インドの西海岸ゴアの、いわゆるヒッピーズ・ビーチではそれが顕著で、海辺のバーやゲストハウスやレストランでは本当にいつでもボブ・マーリーが流れていて、私もすっかり好きになった。
ボブ・マーリーを聞きながら旅をしていた。

以前、あまりにも暇で退屈している時に、考えた。
いろんな分野のライフタイム・トップ1を。
人生で一番好きな曲を、悩んで悩んで決めた。
それが、ボブ・マーリーのNo Woman, No Cryだった。
美しいメロディーと美しい歌詞と、底に流れる物悲しく切ない旋律で、今でもこの曲を聞くたびに泣く。

なのに、私は今まで一度もボブ・マーリーがどんな人だったか調べようともしなかった。
生涯のトップ1だというのに。
ジャマイカの英雄で、レゲエのスーパースターで、若くして死んだことぐらいしか知らなかった。

このドキュメンタリー映画を見るまで知らなかったことばかりだ。
私は、彼が黒人と白人のハーフだということすら知らなかった。
改めて見てみれば、彼の肌はブラックというよりブラウンだったし、顔立ちも生粋の黒人とはかけ離れていた。
父親はイギリス系の白人で、名家の出身で、何人もの女に子供を産ませ、彼には母親の違う兄弟がたくさんいるらしい。
だが、ほとんど会ったことすらないまま父親は亡くなり、マーリー家にはついぞ身内だと認められなかった。
ハーフで肌色の薄い彼は母親の身内からも疎まれ、拒絶され、貧しい暮らしの中で厳しい幼少時代を送る。
彼が17歳の時に母親は出稼ぎにアメリカに行ってしまい、彼は音楽で独り立ちすることになる。

その後の人生は、なんか、いろいろ凄すぎて、今の時代の倫理観から言うと、批判され、非難されることもきっと多いだろう。
彼の信条であるラスタファリではガンジャ(大麻)は神からの贈り物だったので、ほぼ常に吸っていたし、妻も子供もいたけれど、その他に恋人もたくさんいた。
妻のリタを含め、計7人の女性が彼の子供を計9人生んだ。
すごいのは、リタはそんなボブと生涯離婚しなかっただけでなく、コーラスとしてツアーにも常に同行し彼を支え、彼が毎晩自分以外の女たちと寝ているのを許容していたってことだ。
リタにとってボブは、夫以上の存在、スターで神だったらしい。

ボブ・マーリーはただの偉大なミュージシャン、偉大なヒットメイカーではなく、レゲエそのものを作った一人で、ラスタファリという宗教的思想運動を信じ、神を信じ、ジャマイカを立て直そうとし、真剣に世界中に平和をもたらそうとし、そのために貧者に施しをしたり、危険地帯でもかまわず飛び込み、銃撃にあい、催涙ガスを浴び、それでも世界を飛び回ってステージで歌っていた、一人の偉人だった。

彼の音楽があまりにも美しいので、彼がなぜここまで世界中で愛されているのかを気にしたことなどなかった。
でも、改めて知ると、すごい。
むしろ彼は美しい歌を作って歌う宗教家であり、革命家だったんだなあと思う。

足の親指に悪性メラノーマを発症し、多くの医者には親指の切断を勧められたが、それではダンスが踊れないからと、部分的な切除ですむといった医者を見つけて信じた結果、ガンが全身に転移し、36歳の若さで死んでしまう。
アメリカツアーの最中に倒れ、ニューヨークの病院で治療を続け、手の施しようがないと退院させられたが、それでもと一縷の望みを抱いて世界一の医者がいるという雪深いドイツの専門病院へ。
そこも退院させられたが、結局ジャマイカには戻らず、マイアミへ。
ジャマイカのシンボルともなった彼が、人生の最後をジャマイカで送れなかったのが実に悲しい。

エンディングでは、彼の美しい音楽を流しながら、世界中にいる彼のファンたちが彼の歌を歌っているところを次々と見せていく。
画面の隅っこに、それぞれの国の国旗をのせて。
その中には日本の国旗もあって、日本人のファンたちが彼の歌を歌っている。
アジアで登場したのは日本だけだったから、日本には彼のファンが特に多いんだと思う。
彼は日本にもツアーで来ていて、もし生きていたら、私も彼のコンサートに行く機会があったのかもしれないなあとぼんやり思う。
でもそんなことより、彼がもしまだ生きていたら、きっと遥かに多くのことを成し遂げられたんじゃないかなあと。
でもそんなことはどうでもいいのかもしれない。
彼の魂は今もここにあり、世界中の人たちを励まし、慰め、癒やし、心の支えになっている。
音楽って偉大なんだなあ。
そんなことを改めて思いました。

ボブ・マーリーが好きな人ならぜひ。

詳細評価

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音楽

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