ここから本文です

最終目的地 (2009)

THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION

監督
ジェームズ・アイヴォリー
  • みたいムービー 104
  • みたログ 223

3.40 / 評価:93件

解説

『眺めのいい部屋』『ハワーズ・エンド』などで知られる巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督が手掛けた文芸ドラマ。自殺した作家の伝記執筆のため遺族が暮らす南米ウルグアイを訪れた青年の存在が、彼らの間に波紋を投げ掛け、それぞれが人生の最終地点を問うさまを描く。出演は名優アンソニー・ホプキンス、『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』のローラ・リニー、『アンチクライスト』のシャルロット・ゲンズブール、テレビドラマ「LOST」や『ラッシュアワー3』など国際的に活躍する真田広之ら実力派がそろう。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

コロラド大学の教員オマー(オマー・メトワリー)は、1冊の著作を残し自ら命を絶った作家ユルス・グントの伝記執筆の許可を得るため、ウルグアイのユルスの屋敷を訪れる。そこではユルスの兄アダム(アンソニー・ホプキンス)とその恋人、ユルスの妻、そしてユルスの愛人と娘が一緒に暮らしていた。オマーは、遺族のキャロライン、アーデン、アダムに伝記執筆にあたっての交渉をするが、アダムに話を持ち掛けると……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2008 ST. PANCRAS INC. ALL RIGHTS RESERVED
(C)2008 ST. PANCRAS INC. ALL RIGHTS RESERVED

「最終目的地」辺境の地で身動きがとれなくなった人間たちの“最終目的地”

 だいぶ前にピーター・キャメロンの原作を読んだときから、映画の公開を楽しみにしていた。この原作には、ヘンリー・ジェームズやE・M・フォスター、カズオ・イシグロなど、ジェームズ・アイボリーが好んで映画化してきた作家に通じる世界があるからだ。故郷との距離や異文化を背景に、登場人物たちの内面が炙り出されるといえばよいか。

 それに加えてこの物語の場合には、死者が登場人物たちを結びつけていくところが興味深い。著書を一冊だけ残して自殺した作家が、彼の伝記執筆の公認を得たいイラン系アメリカ人の大学教員とウルグアイの辺境に暮らす作家の遺言執行者たちを出会わせる。

 作家の未亡人、愛人とその娘、作家の兄とそのパートナーは、辺境の地で作家の不在という空白に囚われ、時間が止まってしまったような空間を生きている。しかし、大学教員が泥濘(ぬかるみ)に足をとられるエピソードが示唆するように、彼もまた最初から自覚のないままに身動きがとれなくなっている。

 このドラマに劇的といえる展開はほとんど見当たらないが、それでも私たちを引き込んでしまうのは、原作の饒舌な言葉が簡潔な映像言語に置き換えられているからだろう。ナチスの迫害を逃れて南米に渡った一族の歴史を刻むホームムービー、作家の未発表原稿、兄が隠し持つ亡母の宝石などから、登場人物たちの心の揺れや変化を想像していくうちに、それぞれの新たな“最終目的地”が見えてくるのだ。(大場正明)

映画.com(外部リンク)

2012年9月27日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ