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ペイド・バック

ペイド・バック

THE DEBT

113

myb********

4.0

スリリングなスパイ・ミステリー

モサド(イスラエル情報機関)の工作員3人が、ナチスの人体実験で戦犯となっていた収容所の外科医フォーゲルを倒したイスラエルの英雄として帰国したことを、工作員だったステファン(トム・ウィルキンソン)とレイチェル(ヘレン・ミレン)の間に生まれた娘が30年後に本にして発表したところから物語が始まります。もうひとりの工作員だったデイヴィッドが自分を呼び出した男がステファンと知って、脇を走り抜けようとするトラックの前に飛び出して謎の自殺を遂げる衝撃の幕開け。 原題は「THE DEBT」で「代償」とか「負い目」、自殺したのは何かに「負い目」を感じていたから・・・?「ペイド・バック(PAID BACK)」は「払い戻した」。その後過去のミッションで英雄的存在になった経緯が映し出されるので、いったいなぜデイヴィッドが?って謎を引きずりながら、ミッション当時を最初から振り返る映像が始まります。 若かりし頃のレイチェルをジェシカ・チャスティン、デイヴィッドをサム・ワーシントン、ステファンをマートン・チョーカシュが演じていて、見た目は30年後を演じた俳優さんたちと似てるワケではないにもかかわらず、フシギと若い頃の3人だって思えるようになってきます。 この3人のそれぞれの思いが複雑に絡み合いますけれど、一度ベルリンからの脱出に失敗したために訓練を受けているはずの工作員たちですら不安定な精神状態に陥るっていうさまがよく描かれてます。拉致したフォーゲルを演じたイェスパー・クリステンセンがまた、「羊たちの沈黙」のレクター博士を髣髴させる不気味で危うい殺人鬼的なムードをめっちゃ漂わせていて背筋が寒くなるほどです。 30年前のミッションで何があったのか、そしてデイヴィッドの自殺の謎が徐々に明らかになっていくミステリーで、モサドで出世したステファンが新たにレイチェルにひとつの命令を下すことになります。 ミッション当時の工作員たちのアクションとそれぞれの存在感、30年たったあとに再び起こる何かに立ち向かうレイチェルを演じたヘレン・ミレンの重厚な存在感が、鮮烈な印象を残す見ごたえのある作品です。若い頃を演じたサム・ワーシントンとジェシカ・チャスティンがお互いに惹かれあっていながら結ばれること泣く終わってしまった切なさも、モサドの工作員としての任務を遂行する姿も、実に味わい深く描かれていたと思います。 最後に娘のために下した母としてのレイチェルの決断も見所です。タイトルの意味を考えながらいつも観るんですけれど、観終わって振り返ったときにわかった気がしました。

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