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危険なメソッド
2012年10月27日公開

危険なメソッド

A DANGEROUS METHOD

PG12992012年10月27日公開

ステレオ

5.0

ネタバレユング理論は危険なメソッド

精神分析の患者は自分のコンプレックス(性的・感情的葛藤)を治療者に向けることがあり、これを「感情転移」もしくは「転移」と呼ぶ。 患者ザビーナは「父親に叱られ尻を叩かれたとき、性的興奮を覚えた」と語り、父親を治療者ユングに投影し、ユングはそれを受け入れ性的関係になる。 その関係の中で、ユングがザビーナの尻を叩くのは正に「転移」である。 一方、治療者が自分のコンプレックスを患者に向けることがあり、これを「逆転移」と呼ぶ。 ドイツ人のユングはユダヤ人のフロイトを何とか乗り越えたいというエディプス・コンプレックスのような感情を抱えている。 ユングの夢の中の「馬の進行を妨げる小屋」「老人の幽霊」はフロイトの象徴であろう。 「ユダヤ人の精神分析医になりたい女性患者」ザビーナをユングが担当することになる。そして、なんと妻子持ちのユングはザビーナと性関係を結んでしまう。 ユングとザビーナは離れたり、再会したりする。 その後、ザビーナは他の人と結婚し妊娠し、ユングの家を訪問する。 そのとき、ユングから現在も女性患者を愛人としていることを聞かされる。 ザビーナは「その愛人は自分に似ているか?」とユングに尋ねる。 ユングは即座に「ノー」と答える。 ザビーナはその愛人は「ユダヤ人の精神分析医になりたい女性患者」ではないかとユングに訊く。 ユングはそれを認める。 ザビーナは帰りの車中で涙を流す。 これをどう解釈するかである。 ユングは「今の愛人はザビーナに似ているか」という質問にノーと即答する。 ユングはザビーナの面影を追っているわけではない。 しかし、「ユダヤ人か?」と「精神分析医を目指しているか?」という質問には「Yes」と答えている。 私はユングのザビーナとの関係は「フロイトを屈服させたい」という「ユダヤ人の精神分析医フロイトへの人種的やエディプス・コンプレックス的な感情」の屈折した表現だと思うのである。 ユングに自分たちの関係は「運命のパートナー」と思い込まされていたザビーナは、実際はユングのコンプレックスの屈折した表現であったことに気付き、がっかりして涙するのである。 つまり、ユングは自分のコンプレックスを「運命のパートナー」など超自然的なファンタジーで隠蔽していたという話だと私は理解した。 だから、フロイトがユングを自分の後継者とはならないと思ったのは当然だと思う。終盤フロイトはザビーナに「ユングは下品な男だ」と語っている。 ユングとフロイトが訣別した後、ユングは抑鬱状態になるが、これもユングがフロイトに対しエディプスコンプレックスのようなコンプレックスを持っていたとすると説明できる。

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