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東京家族 (2012)

監督
山田洋次
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3.39 / 評価:1131件

解説

『男はつらいよ』シリーズや『たそがれ清兵衛』『おとうと』などで知られる、山田洋次の監督81作目となるファミリー・ドラマ。瀬戸内の小島から上京し、自分の子どもたちと久々の対面を果たした老夫婦の姿を通して、現代日本における家族の在り方や絆などを見つめていく。『奇跡』の橋爪功、『人生、いろどり』の吉行和子、「古畑任三郎」シリーズの西村雅彦、『悪人』の妻夫木聡などの実力派が集結し、いつの間にか生じた隙間を埋めようとする家族を熱演する。随所にちりばめられた、山田監督による巨匠・小津安二郎の『東京物語』へのオマージュも見逃せない。

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あらすじ

瀬戸内海の小さな島で生活している夫婦、平山周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)。東京にやって来た彼らは、個人病院を開く長男・幸一(西村雅彦)、美容院を営む長女・滋子(中嶋朋子)、舞台美術の仕事に携わる次男・昌次(妻夫木聡)との再会を果たす。しかし、仕事を抱えて忙しい日々を送る彼らは両親の面倒を見られず、二人をホテルに宿泊させようとする。そんな状況に寂しさを覚えた周吉は、やめていた酒を飲んで騒動を起こしてしまう。一方のとみこは、何かと心配していた昌次の住まいを訪ね、そこで恋人の間宮紀子(蒼井優)を紹介される。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2013「東京家族」製作委員会
(C)2013「東京家族」製作委員会

「東京家族」小津の代表作という意匠を活用して、大船調の家族ドラマを再創造した山田洋次の集大成

 山田洋次が小津安二郎の「東京物語」をモチーフに撮ったと喧伝されているが、主要キャラクターの役名、職業設定、肝となる名台詞がほぼ踏襲されている点でリメイクと断じてさしつかえない。世界映画史上に屹立する小津の名画は、家族のゆるやかな崩壊を深い諦観をもってとらえ、今なお時代を超えた普遍的な感情を喚起させる。とりわけ、戦死した次男の未亡人紀子(原節子)が後半、戦争の不穏な影をシンボライズする存在として大きく浮上してくる作劇が見事だ。

 現代を舞台にこの古典を再生するにあたり、山田は戦争の傷痕の代わりに、東日本大震災という悲劇をクローズアップする。「東京物語」では不在だった次男昌次(妻夫木聡)を召喚させ、被災地でのボランティアで知り合った婚約者紀子(蒼井優)が、原節子と同様に、ドラマの後半を牽引することになる。

 スローな口調で脱力気味な母親を好演する吉行和子をはじめ女優陣が健闘するなか、ひどく気になるのが長男を演じる西村雅彦の小津映画の人物を中途半端に模倣した奇怪な台詞回し、それに長女の夫を演じる林家正蔵の腰の据わらぬ浮薄な芝居だ。このふたりはどうにも全体の演技のアンサンブルを壊している印象が否めない。

 山田は、おそらく小津特有の相似形の人物配置、ローアングルなどの極度の様式化、そして、その果てに現前する残酷なまでの現実凝視には興味がないのだ。むしろ小津の代表作という意匠を巧みに活用しながら、自らを育んだ伝統的な大船調のヒューマンなホームドラマを再創造したのだといえよう。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2013年1月17日 更新

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