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午前一時

午前一時

ONE A.M.

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bakeneko

5.0

ネタバレパントマイムの至芸!

冒頭のタクシー運転手以外、全て1人のパントマイムのみでギャグを繋いでいく“究極のワンマン映画”で、動きの面白さだけで20分間集中力を保つ天才性に驚嘆する作品であります。 2012年の秋に(2010年に発掘された)「A Thief Catcher(泥棒を捕まえる人)」の公開と合わせて、1914-1917年のチャップリン出演作品をデジタルリマスター化した“チャップリン・ザ・ルーツ”が公開されています。 特に、チャップリンが主役を安定して演じるようになって相手役がエドナ・パーヴィアンスに固定していた名作品群(16作品)には、現在日本を代表する弁士やベテラン声優の丹念な声が付いていて、普段は映画の劇場公開の吹き替え版は“死んでも観ない”私でさえも拍手する出来栄えになっています。 大昔(1976年~1978年)にNHKが放映した(今は存在しない)“チャップリン小劇場”のフランキー堺活弁版の名人芸に感嘆したファンにとって、今までに発売されている初期の2巻もの(20分)の傑作短編の様々なソフトの品質は残念ながら満足のいくものではありませんでした(画質の悪さ、字幕の汚さ(フランス語字幕も!)、物語展開とのシンクロを全く考えずに同じ曲を繰り返す音楽など、手抜きソフトの代表格でした)。 今回は、(チャップリンの―冒険、質屋、勇敢、掃除番、午前一時、舞台裏、駆落、消防士、スケート、寄席見物、替玉、放浪者、失恋、移民、伯爵、霊泉)に見事な語り&声が入ったバージョンが創られています(やっと初期短編のきちんとしたバージョンを人に紹介できるなあ)。 本作品は、現在のNo.1声優の一人である山寺宏一さんの名人芸で(パントマイムを見慣れていない子供でも)とても楽しめる一編となっていて、“階段落ち”ネタや古いフィルムの特徴を生かしたアドリブも冴えています。それにしても、チャップリンの体芸は現代でも瞠目させられるもので、階段を上るアクションだけで誰もまねできない動きを魅せてくれます。 唯一無二&一騎当千の天才の至芸に理屈抜きに見とれる20分間で、私の様に既にご覧になっている方も、今回の完全修復版では多くの不明瞭だった部分がはっきりしているので新鮮に楽しめると思いますよ! (おまけ―レビュー項目がないので) 「泥棒を捕まえる人」 2010年にミシガン州でのガレージセールの中から発掘されたフィルムで、チャップリンは後半に2シークエンス(1分足らず)警官(2人いるうちの偉い方)で出演しています。「成功争ひ」等の初期の“奇妙な動きをする変なキャラクター”のパターンで、横柄な警官を演じています。 で、作品ですが、殺人?を目撃してフィルムに収めた男がそれに気が付いた2人の犯罪者に追われるサスペンス喜劇で、小屋の中に閉じ込められる全体絶命の危機と至近距離で拳銃で撃ちまくられる緊迫感でなかなか楽しませてくれます。主人公の愛犬のフレンチブルドッグが大活躍する愉しさも見どころで、もし完全な形で保存されていたらなかなかの佳作となったと思われます。 しかし残念ながら本作品は不完全で、(よくある疲弊フィルムの残存版の様に)終盤部欠損-残存フィルム再編集繋ぎによる“無理やり落ち”で唐突に終わってしまいます。 出演シーンは1分にも満たないのですが、チャップリンの才能を確認できる作品で、もしかしたらまだまだ完全フィルムが発見されるかもしれません。 ねたばれ? 1、後から付けたと思われる“変な効果音”も必聴! 2、チャップリン研究家の大野裕之さんによれば、同様に“助っ人出演”した作品はまだあるそうなので今後の発見に期待しましょう!

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