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ムーラン (2009)

花木蘭/MULAN

監督
ジングル・マ
  • みたいムービー 3
  • みたログ 17

3.20 / 評価:5件

泣き虫の将軍

  • lamlam_pachanga さん
  • 2013年7月17日 13時27分
  • 閲覧数 1548
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

本作は09年製作の中国(香港)映画で、98年にはディズニーが映画化した『ムーラン』を実写化した歴史大作です。

原典は中国で語り継がれる女将軍“花木蘭(Mulan)”の物語。京劇の人気演目としても有名ですが、この主人公・木蘭が実在したかどうかは謎のまま。と言うのも、古くからの文献(「木蘭辞」など)には登場するものの、所謂、正史を記した“史書”には全くその名が登場しないから。しかし、中華圏では「木蘭従軍故事」として広く語り継がれています。

この大作を手掛けるのは、香港の馬楚成(ジングル・マ)。90年代に撮影監督として名をあげ、99年の『星願 あなたにもういちど』で監督へ転身。日本では無名ながら、00年の『東京攻略』、04年の『シルバーホーク』などが公開されています。これまでに大作映画の経験はなく、今回、大陸資本の援助を受けて初の挑戦となります。

主役の花木蘭を演じるのは、日本でも人気の趙薇(ヴィッキー・チャオ)。先頃、『致我們終将逝去的青春』で監督デビューを飾るなど、順調に活躍の場を広げています。この相手役の陳坤(チェン・クン)は最近の活躍著しい大陸の二枚目。このほか、胡軍(フー・ジュン)、房祖名(ジェイシー・チェン)、于榮光(ユー・ロングァン)が脇を固め、何故かロシアの美形歌手・ヴィタスが友情出演しています。

それでは、女将軍・木蘭のお話です。

南北朝時代。異民族・柔然の侵攻に晒される魏国の皇帝は徴兵令を発し、各戸から男子一人の出征を命じる。一人娘の木蘭(趙薇)と暮らす花孤(于榮光)は病床をおしてこれに応じるが、父を気遣う木蘭は黙って出征。同郷の小虎(房祖名)の助けもあり、女とバレずに周囲に溶け込んでいく木蘭は、ある日、厩舎で文泰(陳坤)と言う兵士と知り合い、その屈託のない笑顔に親近感を抱く。一方、柔然の王子・門獨(胡軍)は遂にその野心を表し、魏国への侵攻を本格化させる...。

この映画が何で日本に輸入されなかったのか、ようやく理解出来ました。

それは、観客を愉しませる要素があまりに少ないからです。

馬楚成は、撮影前からも、そして映画完成後も「ディズニーとは違う映画だ」と言い続けていましたが、今は、これに100%同意します。

木蘭は、最初に書いたように伝承の中の人気者です。地方のお嬢様が従軍し、戦功を挙げ、将軍の地位にまでのぼりつめ、故郷に錦を飾る。これが本来の木蘭の物語であり、大衆が親しむ“英雄譚”として完成されたものでした。しかし、馬楚成がやろうとしたのは、“人間”、或いは“女性”としての木蘭を描くこと。そのために、観客が本来味わえるはずの映画的興奮が消え失せ、画面には木蘭の“苦悩”ばかりが描かれる。

戦いに怯え、仲間の死に号泣し、愛情に動揺する。

この“苦悩”を表現しているのは、ひとえに趙薇の演技力です。過去の英雄像から離れ、木蘭に小柄な女性としての血肉を通わせます。しかし、皮肉なことに趙薇の演技が光れば光るほど、かえって個々のエピソードの印象が弱まり、映画として観客に語りかけるものはなくなっている。その多くは脚本の責任ですが、要はこの映画には物語としての一本の大きな幹がない。だから、個々のエピソードにも全く説得力がないのです。

馬楚成は演出らしい演出を施さず、木蘭がとんとん拍子に出世していく過程、或いは兵士から絶大な信頼を得る理由を、彼女が“百戦百勝”だから、で片付けています。それは分かるけど、そもそも彼女がどのようにして常勝将軍へと変貌を遂げたのか、この描写で納得する観客なんているんでしょうか。

木蘭に集中し過ぎたのか、周りのキャラクターにも誰一人魅力的な人物はおらず、陳坤のイケメンぶりと、長髪姿でちょっと気持ち悪い胡軍の怪演が光る結果になっています。

『ムーラン』は歴史大作を名乗りながら、その実、ある女性の物憂げな顔を描き続けたメロドラマです。

馬楚成の失敗は、木蘭を人間として捉え過ぎたこと。苦悩する女将軍・花木蘭を描く心意気は買いますが、せっかく過酷な戦場で12年も頑張り通したのに、最後まで苦悩に包んで終わらせてどーすんのよ(苦笑)

詳細評価

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