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R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私
2013年2月2日公開

R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私

R15+1062013年2月2日公開

ham********

3.0

エンタメとしては悪くないけど

私は先に蛭田亜紗子氏の原作を読んでから映画を観ました。原作の方は短編連作で、このセルフボンテージ以外にも、関係した相手のゴムに入った精液を冷凍して集める女、関係した女を細かく採点してノーツに記録する男、ラバースーツを着用することで快感を得る人など、いろんな性癖を持った人の行動や思いが6つの章にわたって、ときに淡々と、ときに熱く語られていきます。 竹中直人監督でよしもとクリエイティブエージェンシー製作での映画化。大筋では原作の「自縄自縛の私」の章のストーリーに沿っています。しかし、原作のすべての話に通じるエッセンスを感じさせるのを意図しているかのように、他の章の登場人物を原型にしたりしながら新たなオリジナルの人物設定をして、原作とはまた違ったエンターテインメント性を演出しているように思いました。 そこが良し悪しです。 悪い点。 原作にで私が好きだった部分、各章の主人公たちの一人称で語られることで感じられる背徳との境目をさまよいながらも、あるがままの自分を肯定的にとらえることで滲み出る落ち着いた静かな幸福感。それが竹中流なのか吉本系なのかお笑い要素の演出を入れることで、派手さがあって楽しめる部分もあるのだけど、なんだか本来の味わいに欠けるノンアルコールビールみたいな感じになってしまっている気がします。 良い点。 小説としては成功している原作ですが、その忠実な再現だけでは映画としては成立しなかったであろう部分を、エンターテインメントとして106分の鑑賞に堪えうる作品に仕上げた点は評価できるのではないでしょうか。竹中監督ならもっと生々しくなるかと思った性描写も、原作の雰囲気に近いものを表現していると思います。 結局のところ、いろいろ工夫も見られて映画作品としては悪くないとも思うのですが、やはり原作の味わい深い部分をスポイルしてしまった点において違和感を禁じ得ない惜しい作品という感じです。物語のクライマックス近くに主役の「私」が運転する車は、維持費がかかりそうな金色のコンバーチブルのでかいアメ車ではなくて、中古で安く購入した小さな青いフランス車なのです。 エンドロールで流れるLOVE PSYCHEDELICOの「No Reason」は原作にも映画にも雰囲気が合っていてよかったです。

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