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もうひとりのシェイクスピア
2012年12月22日公開

もうひとりのシェイクスピア

ANONYMOUS

PG121292012年12月22日公開

shi********

4.0

もうふたりのシェイクスピア

数々の名作を残した劇作家ウィリアム・シェイクスピア。 しかしその直筆の原稿は一つも発見されていない。(本作で初めて知りました) そのシェイクスピアは名前を貸しただけで、数々の名作の全ては実は別人が書いていたのでは? 本作はそんな大胆な仮説を元に、当時の英国王位継承を巡る確執と策謀を描いたドラマである。 信じるか信じないかはアナタ次第、と言った感の話だが、陰謀論者の私には興味深い。 監督はあのローランド・エメリッヒ。 ワシントンを吹っ飛ばしたり、ゴジラを巨大イグアナにしたり、ニューヨークを高潮で沈めたり、ユーラシア大陸を大移動させてアフリカ大陸を隆起させた大御所だ。 本作は400年前の話だが、12000年前の話も映画にしてしまうのだから、彼にしてみれば400年なんてついこの前。 そんなスペクタクル監督が何とも意外だが、過去にはメル・ギブソン主演で「パトリオット」という歴史モノを撮っている。 現代から始まるオープニングも意外。 「匿名」を意味する「アノニマス」(本作の原題)という舞台劇の上演の様子から始まる本作は、その舞台劇を映画として映像化したという設定である。 また主人公はシェイクスピア本人ではない。 戯曲を愛し、数々の作品を書きながらも、その身分ゆえに発表できない貴族エドワードが主人公である。 そのエドワードが名前を貸すよう依頼するのがベンジャミン・ジョンソンという劇作家。 しかし彼は、どうせ貴族様がお遊びで書いたくだらない作品だろうと見くびり、また劇作家としてプライドもあってか、その話を劇団員のシェイクスピアに丸投げしてしまうのである。 しかしいざその劇を上演すると、観客は熱狂。 無名の劇団員だったウィリアム・シェイクスピアは大喝采を浴びる。 まぐれ当たりだろうとも言われたが、その後も戯曲は大評判、他の劇団もこぞって上演するようになる。 つまりもしジョンソンがそのまま依頼を受けていれば、偉大な劇作家として残った名は「ウィリアム・シェイクスピア」ではなく「ベンジャミン・ジョンソン」だったわけである。 「もうひとりの~」という邦題だが、このジョンソンも入れて「もうふたりの~」と言いたくなる存在である。 ちなみに本作で描かれるシェイクスピアはロクデナシで、文字もろくに書けない男である。 もちろん恋におちるような素敵な話にはならない。 恋におちるのはエドワードの方で、彼の若き日のそんな様子も描かれるが、これが後におぞましい結末を招くことになる。 このエドワードは最初は嫌な奴かと思ったが、ひたむきに戯曲を愛し、自分の作品を愛し、名誉よりも作品が世に出ることを望む純粋な部分も持つ男である。 ちなみに名前を借りて作品を提供し、利益を得ようということもなく、それどころか上演のための経費も口止め料込みで提供するのである。 ただしベンジャミンに対して「お前には文体などないだろ」と高慢な態度を取ったり、自分の作品を策略に利用しようする部分もある。 権力を批判する作品も書くが、我が子に王位を継がせたいという想いが根底にある。 また権力者・セシル卿の曲がった背中を皮肉るが、その皮肉り方が酷く、人としてどうかと人格を疑ってしまう。 映像はセピアを基調として非常に美しく、またいかにもエメリッヒ的な雄大感のあるシーンもあった。 ただし人物背景が非常に難しい。○○伯○○だとか○○王○○だとか、当時の貴族王族の名前が飛び交うので、歴史に疎い私にはかなり厳しかった。 鑑賞しているうちに何となくだが理解はできたが、中盤あたりまではチンプンカンプン。 当時の歴史背景や人物の相関を予習しておけば良かったと思う。 そういった複雑さはあるものの、またシェイクスピア信奉者にとっては怒り心頭かもしれないが、見応えは十分の作品だった。

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