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舟を編む (2013)

監督
石井裕也
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4.00 / 評価:2701件

解説

2012年本屋大賞に輝いた三浦しをんの小説を、『川の底からこんにちは』などの石井裕也監督が実写映画化。ある出版社の寄せ集め編集部が、気の遠くなるような歳月をかけて二十数万語が収録された新辞書作りに挑む姿をユーモラスに描く。辞書の編さんに没頭する主人公・馬締光也には、三浦原作の『まほろ駅前多田便利軒』にも出演した松田龍平。彼が一目ぼれするヒロインには、『ツレがうつになりまして。』の宮崎あおいがふんするほか、オダギリジョーら多彩な顔ぶれがそろう。

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あらすじ

玄武書房に勤務する馬締光也(松田龍平)は職場の営業部では変人扱いされていたが、言葉に対する並外れた感性を見込まれ辞書編集部に配属される。新しい辞書「大渡海」の編さんに従事するのは、現代語に強いチャラ男・西岡正志(オダギリジョー)など個性の強いメンツばかり。仲間と共に20数万語に及ぶ言葉の海と格闘するある日、馬締は下宿の大家の孫娘・林香具矢(宮崎あおい)に一目ぼれし……。

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映画レポート

(C)2013「舟を編む」製作委員会
(C)2013「舟を編む」製作委員会

「舟を編む」辞書作りを言葉と文字をめぐる活劇のように撮った石井裕也の秀作

 近作の2本では、才に溺れたふうな一抹の危惧を感じさせた石井裕也監督が放った画期となる秀作である。

 日本映画には育児のノウハウを伝授する「私は二歳」、葬儀をイベント化した「お葬式」といった薀蓄(うんちく)エッセー系とも称すべき映画の系譜があるが、本作はそこに<辞書作り>という新生面を拓いた点も見逃せない。映画では、主人公の馬締(松田龍平)と香具矢(宮崎あおい)の恋の行方をのぞいては、ドラマを牽引するような起伏に富んだアクシデントはほぼなにも起こらない。その代わりに、「大渡海」完成までの15年にわたる地道な編集作業が定点観測のように描かれる。しかし、その膨大な用例採集、見出し語の選定、語釈をめぐる果てのない議論は、時に白熱し、深刻であり、時にはユーモラスでトンチンカンでさえある。石井裕也は、それらのダイアローグをあたかも、<言葉>と<文字>をめぐるアクション映画のように撮っており、画面はつねに停滞することなく、軽やかに滑走し続け、見る者を決して飽かせないのだ。

 15年の長い歳月のあいだには、幾人かの<死>も訪れるが、よけいな感傷に耽ったり、思い入れたっぷりな愁嘆場を一切みせない、簡潔で抑制した語り口も特筆に値する。茫漠とした松田龍平が巧まざる笑いを醸し出し、新境地といっていい。往年の日活映画の記憶を心地よく刺激する渡辺美佐子、伊佐山ひろ子という絶妙なキャスティングにもニヤリとさせられた。

 恐らく今年の邦画の台風の目となるであろう1本である。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2013年4月12日 更新

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