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眠れる美女 (2012)

BELLA ADDORMENTATA/DORMANT BEAUTY

監督
マルコ・ベロッキオ
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3.74 / 評価:43件

解説

イタリアで実際に起きた尊厳死をめぐる事件から着想を得たヒューマンドラマ。昏睡(こんすい)状態に陥った女性を看病する女優、自殺願望を抱えた女と対峙(たいじ)する医師、妻の延命を止めた過去を持つ政治家と彼を憎む娘を描いた3編の物語を同時進行させながら、生と死を見つめる人間の姿を浮き上がらせていく。監督は『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』などのマルコ・ベロッキオ。『ゴモラ』などのトニ・セルヴィッロ、名女優イザベル・ユペールら、イタリアとフランスの実力派俳優が結集して熱演を見せている。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

昏睡(こんすい)状態の女性エルアーナ・エングラーロの両親による延命装置停止の訴えを認めた最高裁の認定の是非をめぐって揺れる2009年のイタリア。昏睡(こんすい)状態だった妻の延命装置を停止させたことを引きずる議員ベッファルディ(トニ・セルヴィッロ)は、エルアーナの延命延長法案の投票を前に悩む。一方、医師パッリド(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ)は盗んだ薬を服用して昏倒(こんとう)した女性を助けようとする。また、大物女優(イザベル・ユペール)は同じく昏睡(こんすい)状態にあるまな娘の姿をエルアーナに重ねる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2012 Cattleya Srl - Babe Films SAS
(C)2012 Cattleya Srl - Babe Films SAS

「眠れる美女」政治、宗教、倫理を問う、3つの物語から噴出するエモーション

 今世紀に入って、現代史の闇をえぐる挑発的な傑作を放ってきたマルコ・ベロッキオの新作「眠れる美女」は、2009年にイタリア全土を震撼させたエルアーナ・ユングラーロの尊厳死事件に触発された3つの物語からなる。

 1つ目はかつて妻の延命治療を停止させた過去をもち、ベルルスコーニ首相の延命措置を続行させる法案に賛成票を投じるか悩む国会議員とその父に不信感を抱く娘の話。2つ目はキャリアを捨てて植物人間状態の娘のために介護に専心する元大女優とその家族の物語。3つ目は麻薬中毒で自殺願望に憑りつかれた女と医師の話だ。

 だが、ベロッキオは、尊厳死の賛否をめぐる単純な二元論的な問題提起を主題にするのを周到に避けている。映画は、通常のオムニバスとは違い、3話が同時並行で語られる。そのため、一見、混乱をきたすかにみえるが、政治的な視点、宗教性を帯びたカソリック的な視点、そして人間的な倫理を問う視点が強調された、それぞれ独立した挿話がシャッフルされる中で、画面の奥底から熱く煮えたぎる狂気にも似たエモーションが噴出してくるのだ。これこそが、ベロッキオの映画の唯一無比の魅惑である。とりわけ、自殺常習犯の女が窓から飛び降りようとするのを、必死で抱きとめて阻止する医師、この2人が病室で朝をむかえるシークエンスは素晴らしい。

 薄明の中、癒しがたい孤独と絶望を宿したヒロインの瞳に、一条の光が宿る瞬間を、映画は決して見逃さない。ベロッキオの秘蔵っ子であるマヤ・サンサの悲哀と希望がないまぜとなった表情が、観る者のうちに深く刻み込まれるのである。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2013年10月10日 更新

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