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インポッシブル
2013年6月14日公開

インポッシブル

THE IMPOSSIBLE/LO IMPOSIBLE

1142013年6月14日公開

kih********

3.0

究極の災害保険に加入しておきたい

 この家族が全員揃って生還、再会できたことを一緒に喜びたいと思う。こういう惨状に遭遇しても普段の豊かな家族愛と強い絆が“生きる力”の源であることもしっかり肝に銘じておきたいと思う。  ところで、この家族は被災地からシンガポールの病院に救出された時点で、保険会社の担当者から「これで大丈夫です」と、災難からの決別を宣言される。その辺でこの「真実の物語」が終る。なんだその程度の「真実」だったかと、いささか残念な気持ちにもなる。  阪神の震災の時、身内の不幸の救援のために現地に入った時のことを思い出す。どれだけの人々に助けられていたことか。結果的には犠牲者になってしまったが、見知らぬ人々の決死の救出劇があった。人はこれ程に優しくなるものか、これ程勇ましくなるものかと恐れ入った。この映画にもあるように、バッテリーの残りが少ない携帯電話の譲り合い(私の場合には、公衆電話のテレホンカード)、自分の家族ではない子どもの救助、混乱する病院の秩序維持・医療関係者の献身等々、おそらく、私等が気付いていない多くの人々の犠牲的な物心の提供によって支えられていたのだ。  この映画での家族が、保険適用による被災地脱出劇によって終わりならば、それは単なるセレブファミリーの夏の思い出劇に過ぎない。大切なのはその後だ。この奇跡ともいえる経験によって、この家族は、特に子どもたちは、その後どのような人生を進んでいるのだろうか。  私はこのような保険(あつかましくも会社の実名を出している)には加入しない。保険に入らずとも、助けていただけるという助け合い(これこそが究極の保険)を知っているからだ。私だったらこのような映画化には同意しない。この保険会社は被災地に何らかの基金提供などの貢献をしただろうか。この映画製作会社は興行収益金を現地に還元しただろうか。この家族はこの映画で全世界から見られてしまった。ならば、その後の暮らしぶりを映画化してもらって、“社会との絆”の「真実」を公開していただきたい。もう、プライバシーなどとは言っておれないのだ。保険会社は「これで大丈夫(終わり)」だが、被災者とその家族(知人・友人も)は「終わり」のない人生を歩んでいるのだから。

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