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嘆きのピエタ (2012)

PIETA

監督
キム・ギドク
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3.75 / 評価:427件

キム・ギドク監督完全復活

  • 野暮な江戸っ子 さん
  • 2013年9月1日 8時46分
  • 閲覧数 2916
  • 役立ち度 35
    • 総合評価
    • ★★★★★

隠遁から「アリラン」まで、キム・ギドクはどうなってしまうのだろうかと、勝手な心配をしていましたが、本作を見て、余計な心配だったと思い知らされました。
言葉にするのは難しいのですが、えぐられるような感覚と深く長い余韻はなんともいえません。
「ピエタ」とは、聖母マリアが十字架から降ろされたキリストを胸に抱く像のことで、監督はサン・ピエトロ大聖堂の彫刻からヒントを得たそうです。慈悲や哀れみといった意味があり、母性の象徴とされています。
本作は、復讐劇であるにもかかわらず、母の愛を問い、語りかけてくる映画になっています。
したがって、男と女では、見終わった印象が違うかもしれません。

主人公は、生まれてすぐに親に捨てられ、親の顔も知らず、30年間、天涯孤独に生きてきた、悪徳金融会社の借金取立屋の男イ・ガンド(イ・ジョンジン)。債務者の多くは町工場の経営者。暴利で借金返済困難になると、ガンドは血も涙もない悪魔のような非情さで債務者を障害者にし、その保険金で借金を返済させます。
ガンドは、仕事が終わると自分で鶏を自らさばいて、そして腹を満たしますが、何か満たされないものを感じさせます。
ある日、ガンドの前に、突然母親と名乗る女ミソン(チョ・ミンス)が現れます。初めは疑っていたガンドでしたが、徐々に母親として、ミソンを受け入れていくのでした。
母の愛を感じることで、今まで自分のしてきた強引な取り立てに疑問を感じてきます。子供や家族のために身を投げ出す親の姿が思い出されるのです。
最早、ミソンなしでは考えられない生活となったガンドは足を洗おうと決心します。
そして、ある日、ミソンは拉致されてしまいます。しかし、これはミソンの狂言で、ガンドを呼び出し、目の前で突き落とされたのかのように、ビルから身を投げ自殺してしまうのでした。
実は、ミソンはガンドの母ではなく、借金苦に自殺した息子サングの復讐のためにガンドに近づいたのでした。
母の愛に飢えたガンドに、その愛を十分に与え、自らの命を絶つことで、その愛を失わせるという、想像もつかないような復讐だったのです。
しかし、偽りの親子として暮らした日々は、ガンドを騙しただけでなく、実際に愛情が二人の間に芽生えてしまったように思えました。
ミソンが身を投げる直前に、ガンドを思い、涙を流してしまいます。
それでも、初志貫徹して身を投げるミソン。
赦し、愛しながらも復讐する。その想いはいかばかりか。

ミソンには遺言があり、ガンドは川沿いの松の木の下にミソンの遺体を埋葬しようとします。
そこで発見されたのは、ミソン手編みのセーターを着たサングの遺体。
真実を知ったガンドには、生きる意味は見つけられなくなっていました。
せめてもの、贖罪の道を探すくらいです。

憎悪と愛情は、相反するものかもしれませんが、裏表で非常に近いものなのかもしれないとも感じてしまいます。

キム・ギドク監督、完全復活です。
魂が揺さぶられます。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • 絶望的
  • 切ない
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