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嘆きのピエタ (2012)

PIETA

監督
キム・ギドク
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3.72 / 評価:471件

解説

独創的な作風で世界中から注目を浴びる韓国の鬼才キム・ギドク監督による、第69回ベネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた問題作。昔ながらの町工場が並ぶソウルの清渓川周辺を舞台に、天涯孤独に生きてきた借金取りの男の前に突如母親と名乗る女性が現われ、生まれて初めて母の愛を知った男の運命を描き出す。主演はテレビドラマ「愛してる、泣かないで」のイ・ジョンジンと、ベテラン女優チョ・ミンス。二人の気迫に満ちた演技と、観る者の予想を超えたストーリー展開に圧倒される。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

身寄りもなく、ずっと一人で生きてきたイ・ガンド(イ・ジョンジン)は、極悪非道な借金取り立て屋として債務者たちから恐れられていた。そんな彼の前に母親だと名乗る女性(チョ・ミンス)が突如現われ、当初は疑念を抱くガンドだったが、女性から注がれる愛情に次第に心を開いていく。生まれて初めて母の愛を知った彼が取り立て屋から足を洗おうとした矢先、女性の行方がわからなくなってしまい……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2012 KIM Ki-dok Film All Rights Reserved.
(C)2012 KIM Ki-dok Film All Rights Reserved.

「嘆きのピエタ」拝金主義社会を舞台にした、2つの魂の「覚醒」の物語

 舞台は経営難の町工場がひしめく町。主人公のガンド(イ・ジョンジン)は弱者を食い物にして生きている。孤児の彼には、それしか生きる術がなかったからだ。そんな悪業にまみれた主人公の「どうしようもなさ」を、キム・ギドク監督は見事にすくいとる。「悪い男」や「春夏秋冬そして春」で発揮された人間描写の個性は健在だ。

 拝金主義の弱肉強食社会で、債務者という獲物を貪欲に狩るガンドの獣性を、キム監督は食事の儀式に象徴させる。ピエタ(キリストの亡骸を抱く聖母マリア)という題名の宗教性にならって言えば、ガンドが食事用の動物をさばく浴室にはホロコーストの匂いが充満している。床を濡らす血と肉のイメージが鮮烈だ。

 そんなガンドの前に母と名乗る女が現れたことから、ドラマが動き出す。ガンドに「失うことへの恐怖」を味わわせる母の存在は、彼の中で眠っていた人間性を呼び覚ます。そして、あらわになった母の真実は、より残酷な第2のめざめへと彼を導いていく。

 このシンプルな覚醒の物語は、フェリーニの「道」を想起させる。「道」が野蛮なザンパノと無垢なジェルソミーナの双方の魂の覚醒を描いたように、この映画もガンドと母の2人の覚醒をみつめているからだ。ガンドの覚醒の触媒の役目を果たす母親は、自身も「息子を愛する母」以外の何者でもないことにめざめる。が、それがガンドに伝わることはない。2人の心が永遠にすれ違ったまま放置される無情さが、胸をしめつける。

 さらに、劇の最後にはこんな問いかけも放たれる。金に始まり金に終わる世の中で救いは得られるのか? と。その問いは、好景気の幻想に浮かれる我々の胸にも「覚醒」の2文字を喚起するのだ。(矢崎由紀子)

映画.com(外部リンク)

2013年6月13日 更新

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