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リンカーン (2012)

LINCOLN

監督
スティーヴン・スピルバーグ
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3.36 / 評価:1004件

解説

巨匠スティーヴン・スピルバーグによる、第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの伝記ドラマ。奴隷制の廃止と禁止を強固なものにし、泥沼化した南北戦争を終結させるため、憲法の修正に挑むリンカーンの戦いを重厚なタッチで映し出していく。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などのダニエル・デイ=ルイスがリンカーンにふんし、国と人民の未来をめぐる理想と現実に苦悩する彼の胸中を見事に体現。『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョセフ・ゴードン=レヴィットら、脇を固める実力派の妙演も見逃せない。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

エイブラハム・リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)が、大統領に再選された1865年。アメリカを内戦状態に追い込んだ南北戦争は4年目に突入したが、彼は奴隷制度を永遠に葬り去る合衆国憲法修正第13条を下院議会で批准させるまでは戦いを終わらせないという強い決意があった。そのためにも、国務長官ウィリアム・スワード(デヴィッド・ストラザーン)らと共に憲法修正に必要な票を獲得するための議会工作に乗り出す。そんな中、学生だった長男ロバート(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が北軍へと入隊し……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION and DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC
(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION and DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC

「リンカーン」今も世界中のどこかに生きているはずの「リンカーン」たちへ

 その昔、アメリカは血まみれであった。もはや何が正しいのか誰が悪いのかも分からず、とにかく皆生きるために闘って死んでいった。あの「プライベート・ライアン」の冒頭を更に上回る現実感が怖過ぎる冒頭の戦闘シーンは、そんなアメリカという国の過酷な生い立ちを、血と汗と涙によって映し出していた。

 それが終わると政治闘争が始まる。奴隷制度と政権を巡る言葉による闘いである。しかしその闘いのまっただ中にいるリンカーンはどこか冷え冷えとしていて、血と汗と涙のどこからも離れて見える。リンカーンを演じるダニエル・デイ=ルイスのこわばった表情の所為なのか、それともその若干の猫背の姿勢の所為なのか。とにかく政治の現場の武器としての言葉の外側に、リンカーンがいる。

 一方リンカーンの声は甘くまろやかで、それだけ聴いていてもうっとりする。いつか自分は殺されるだろうという予感に満ちた甘美さが、その声を作り上げているのだろうか。死人のみが持つクールな艶やかさがその声を更に甘美なものにして、それゆえ彼はそこにかろうじて存在する。そんな危うい存在としてのリンカーンが堂々と映し出されている。キャメラは彼を映すというより、彼の声を映そうとしているのだろう。この映画が戦争映画にも政治映画にもならないのは、それ故である。血まみれの果てのスイートな愛が、この映画を語るのだ。つまり「リンカーン」とは、男たちの血まみれの闘争の外側に生きようとする幽かな意志のことなのではないか。今も世界中のどこかに生きているはずのさまざまな「リンカーン」たちに、この映画は捧げられているはずだ。(樋口泰人)

映画.com(外部リンク)

2013年4月12日 更新

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