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ティンカー・ベルと輝く羽の秘密

アニカ・ナットクラッカー

4.0

白銀の新ヒロイン=ペリウィンクル登場

ディズニーのCGアニメ「ティンカー・ベル」は、四季をテーマにした4部作として製作された。一作目から順番に春・秋・夏ときて、冬を舞台にした『輝く羽の秘密』が最終作となる。と思っていたが・・・、観終わってこれで終わらすのはもったいない、あと1~2作はシリーズを続けてもいいのでは?という気持ちになった。なぜかと言うと、本作に登場する冬の妖精“ペリウィンクル”が最強クラスの萌えキャラだったからだ。 顔立ちはティンカー・ベルと瓜二つだが、若干目が小さく髪は銀色。けっして暗い性格ではなく友人にも恵まれているのだが、表情のせいか孤独感を内に秘めているように感じる。少女らしからぬグラマーなティンクとは対照的に、少年のようなスレンダー体型。なんと言っても印象的なのが雪の結晶を思わせる髪型で、ハリウッドのセレブを手がけた有名スタイリストがデザインに協力したそうだ。このあたり、ディズニーのブランド力をまざまざと感じる。 「ピーターパン」に出てくるウィンディーが誕生して、初めて笑ったときに生まれたのがティンク。だが生まれたのは彼女の他にもう一人いて、それがペリウィンクルという設定である。つまりティンクには、生き別れの双子の姉妹がいたというわけだ。双子でありながら、育った環境の違いによって主人公の世界とは相容れない属性が身についてしまう・・・。日本のアニメなら、主人公の強力なライバルとして登場しそうなキャラクターだ。 ペリとどこかで良く似たキャラクターを見たことがある。そう思って記憶をたどってみたら、サン=テグジュぺリの「星の王子さま」であった。顔立ちや髪型が「星の王子さま」の有名な挿絵にそっくりだと思ったし、ティンクと別れてトボトボと歩く姿なんか、もろに“孤独な王子さま”のイメージだ。冬の世界に潜入したティンクと友情を結ぶものの、環境の違いから別れを余儀なくされ、泣きながら抱き合うシーンには胸が痛む。 4作目にして新たな事実が語られる。妖精たちの住むピクシーホロウは、春夏秋の「暖かい世界」と白銀の冬の世界は川で隔たっている。そこを往来できるのは空を飛べるフクロウとか、両方の世界で生きられる動物たち。動物の妖精フォーンに導かれて、テンやウサギたちが国境の丸木橋を渡ると、一瞬にして純白の冬毛に変身するところはロマンチックだ。美しい白銀の世界がふんだんに登場するが、これを見ていると冬とは決して不毛な世界ではなく、他の季節と同様に暖かく豊潤な世界ではないかと思う。 いっぽうで妖精が両方の世界を行き来することは禁じられている。各々の環境に適応した妖精の羽が気温の変化により破れてしまうと、二度と飛べなくなってしまうからだ。これには各々の世界を治める王(ティモシー・ダルトンが声を当てている)と女王の、苦い経験が元になっていた。タイトルになっている「輝く羽」は、同種の妖精が近づくと羽が虹色に光るという現象。二人がまったく同じ紋様をもった羽を重ね合わせる場面は、キスシーンのようでドキドキさせる。 ピクサーの「メリダとおそろしの森」のDVDと一緒に借りて観たのだが、面白かったのは本作のほうだった。「メリダ」のほうがずっと制作費をかけているし、作品的にも優れているとは思う。しかしメリダの性格はふてぶてしく、共感できる要素があまりない。一方で本作はティンクと一緒にいたいと願いながらかなわない、ペリの悲しみにより共感できるのだ。映画というのは、感情移入できるキャラがいるかいないかで評価がまるで違ってしまうのだと思う。 ペリの能力は霜を発生させること。霜といえば農作物に被害を与えることがあるが、本作の霜はむしろ植物を寒気から守る存在として描かれる。暖かい空気の層を閉じ込めて、衣服の役割をするというわけだ。これで思い出したのが蔵王の樹氷。一見過酷な環境に見えるが、氷の下は0度近くに保たれ、滅多に氷点下にはならないという。 暖かい世界に招待したペリを快適に過ごしてもらうため、ティンクは人工的に雪を降らせる装置を発明し、身体を冷やさせながら野外を案内する。ところがその装置が暴走してしまい、際限なく雪を降らせて周囲の気候を寒冷化してしまう。次第にピクシーホロウが凍結していく描写は、まさにディズニー版「デイ・アフター・トゥモロー」である。 怖いのは、暴走した装置を海に落として大元を断つものの、いったん始まった寒冷化の流れが止まらないことだ。人が作った装置が暴走して取り返しのつかない結果を引き起こし、後処理に多大な犠牲を払う・・・。本作が作られたのは2012年だが、どうしても福島第一原発の事故との共通点を思わずにはいられなかった。

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