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宇宙戦艦ヤマト2199/第四章 銀河辺境の攻防 (2012)

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3.92 / 評価:74件

アホほどすぐ「相対主義」に逃げる

  • t_n***** さん
  • 2018年10月6日 23時56分
  • 閲覧数 276
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

 「地球先制攻撃」の設定が飛び出したとたんに物語がひどく陳腐化した。

 ガミラス全体やドメル将軍の描き方からして、ナチスドイツやガンダムのジオン軍のイメージを投影しすぎで嫌だった。(ガミラス星の鳥打帽の少年や街灯の意匠、『ディッツ』将軍なんてものを見て制作者は馬鹿じゃねえかと思った。)それに加えて真珠湾攻撃のパロディーである。
 なぜ何十万光年も離れた宇宙に「宇宙ナチス人」がいて、なぜ23世紀も間近の遠い未来に宇宙のまたにかけて制作者の考えた『ぼくのかんがえたさいこうのWW2』みたいな架空戦記をやらねばならないのか?
 未知の宇宙を進む冒険譚にしてはあまりに想像力が乏しすぎる。

 後に総監督が本作のテーマは相互理解だと言ったという。相互理解の話だからオリジナル版のような単純な勧善懲悪ではなくすぐれているのだと言いたいようである。
 しかし、そのために「先制攻撃」という設定を新たに付け加えて、「お互い様だから仲良くしようね」という流れに話を持っていこうとしている(実際最終章ではそう言いたげな結論の付け方をしている)のは、あまりに安易で幼稚である。また先制攻撃にいたる経緯も芹沢といういかにもな戦犯を設定して全責任を擦り付けてしまっているところも安易である。(この芹沢やガミラスのゲールなど、基本的に本作は旧作にくらべ登場人物は増えたがこいつ善玉、あいつ悪玉と一人一人の造形は逆に薄っぺらくなっている)

 「正義対悪」の設定を転倒させて、「正義対異なる正義」とか「どちらも悪いところがあった」とか、そういう「相対主義」的な結論に持っていく話は昔から腐るほどあり、本作が特に新しい発想ではない。ガンダム以降はそちらの方が当たり前になってきている。
 アホほどそういう「相対主義」にすぐ飛びつきたがる。何だかその方が勧善懲悪より高尚っぽそうだからだ。しかし、そうやってうそぶくやつに限って、では対立をどう終結させるのかという具体的な話になると無策である。

 本作では「ガミラス人は生物的にも同じ人間」「メンタリティは一緒」「分かり合える」の連呼でハッピーエンドに持っていこうとする。実際本作の最終章では、ここで詳しくは書かないが、「わかりあえる」を連呼していたら、棚から牡丹餅で平和が成ってしまう。
 しかし、ここでよく考えてほしい。「同じ人間」で「メンタリティは一緒」で「分かり合える」のだったら、そもそも本作の制作者のお好きなWW2は何で起こったの?なんでドイツは分割されて、広島長崎に原爆が落ちるという惨憺たる結末で終わり、それどころかその後半世紀も冷戦が続き、その後も地球上から戦火は絶えないの?
 むしろ「同じ人間」だから分かり合えないし、分かり合えないから根気強く対話をし、距離をとり、折り合いをつけていかねばならないのではないの?みんなで手に手をとって仲良くゴールインなんてできるのは幼稚園までである。

 本作もよくよく観ると「分かり合おう」と連呼しているのは古代とその周辺だけ、つまり絶滅させられかけている側が妥協案を感情的に提示しているだけなのだ。ガミラスの側はメルダも含めて「先制攻撃を受けたのだから絶滅させるのは当然だ、野蛮人め」という見解であるし、少なくとも地球との友好のため積極的に立ち回るガミラス側の人物が描かれることは最終話に至るまでついぞ無い。ただ反デスラーの反乱分子がこの後登場するだけである。しかし、彼らは別に地球人を憐れんで助けようというのではない。彼らと協力して平和が成ったとしても、状況が変わればまた侵略をするかもしれないし、きっとまた地球人を「野蛮人」と差別するだろう。
 本章はそういう「相対主義」をうそぶく人間の危うさについて、全く考慮していない。兵士同士で飯を食い、キャットファイトしたら何となく仲良くなりましたとさ、それだけである。

 制作者はガンダムのスタッフでもあるんだろう?富野監督からいったい何を教わっていたんだろう?
 思慮が浅い。

 最後にもうひとつ。
 「ガミラス人は生物的にも同じ人間」というのは、本作が最も力を入れているはずの科学考証の観点から、あまりにもありえなさすぎて、戦艦大和が空を飛ぶのよりよほど非科学的である。
 「いや、完結篇のパロディーですよ」とうそぶく者がそれはそれでアホである。パロディーを自分の作話能力のなさをごまかすツールとしか思っていない愚かな人間である。

詳細評価

物語
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