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エンド・オブ・ザ・ワールド
2013年1月18日公開

エンド・オブ・ザ・ワールド

SEEKING A FRIEND FOR THE END OF THE WORLD

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4.0

アイ・アム・ソーリー

小惑星衝突を回避するための作戦失敗がラジオから伝えられると、助手席に座っていた妻はクルマから逃げ出した。同僚の殆どは会社を去り、残った社員も出世欲を失い無気力に日々をやり過ごす、中には絶望して自殺する者も。男の所有物をやめた女たちは、TVの放送コードを無視し、乱交パーティーにあけくれる。地球の終末があと3週間で訪れることがわかって、人類ははじめて真の平等主義に目覚めたのだ。 ネヴィル・シュートの古典SFから設定だけ借りた本コメディは、人類の終末が近づくにつれ仏教の悟りのような心境に達するアメリカ人たちが面白おかしく描かれる。妻子を望まず、一切の所有欲を捨て、身分や人種に関係なく平等に人に接する。いつもは叩き殺していたクモにさえ憐れみを覚える一切衆生悉有仏性の精神。SFの醍醐味はその設定の斬新さにあることを改めて感じさせる1本だ。 死ぬ間際まで煩悩を捨てられない輩が起こした暴動に巻き込まれそうになった、同じアパートの住人ペニー(キーラ・ナイトレー)を救い出したドッジ(スティーブ・カレル)。コメディアンが笑いを封印すると、映画はとてつもなくもの悲しくなるのだか、人生には意味がないことを悟ったドッジがペニーと向かった場所が、これまた大いに泣かせるのである。 エゴとともに今まで無為に過ごしてきた人生のわだかまりを捨て去ったドッジが、人生の最後を誰と過ごしたいと願ったのか。過眠症の眠り姫を目覚めさせたのは、遠くから鳴り響く惑星衝突音ではなく、究極の利他を実践したドッジの深い隣人愛だったのである。あのSF映画の傑作『ディープ・インパクト』のも勝るとも劣らない感動のラストシーンを、是非ご堪能あれ。

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