ここから本文です

くちづけ (2013)

監督
堤幸彦
  • みたいムービー 205
  • みたログ 826

3.81 / 評価:658件

いっぽんの苦悩

  • hetakoitaopapi さん
  • 2015年12月6日 17時40分
  • 閲覧数 2121
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

いっぽんはなぜ自らの手でマコの命を絶つことを決断したのか。

私がうつになったとき、ビルの屋上からボーっと下を見ていたことが何度かありました。
「このまま飛び降りたら楽になれるかな・・・。」
そんな時は必ず息子と娘の顔が浮かんできました。
「今、自分が自殺したら、子供たちの将来も殺すことになるよな・・・。」
そして、今これを書いている自分がいます。

2人暮らしの自分の娘が知的障害者だったら。レイプの経験があって極度の男性恐怖症で、自分以外の男性にパニックの発作を起こす娘。自立を目指して施設に入れようとしても馴染めずにすぐに逃げ出す娘。自分の余命が残り少ないことを分かっていたらどうするか。

自分が死んだあと娘が施設を飛び出したら、誰がどこまで本気で探してくれるのか。警察が保護しようとしたときパニックの発作が起きたら、ちゃんと理解して対応してくれるのか。もし、ホームレスのような状態になったとき、過去の体験のような辱めを受けたとしたら娘はどうなってしまうのか。たしかに施設の方は人間的にも良い人が多くて、専門的な知識や経験もあって、公的機関や支援団体など頼れば楽になれることも頭では理解しているけれど、当然その人たちにもそれぞれの生活があり、仕事と割り切って働いている人だっているだろうし、たくさんの人や事例と向き合わなければならない立場からすれば娘はたくさんの中の一人でしかない。自分にとっての娘、そして娘にとっての自分は1/1ではないまでも1/2の大切な存在だ。自分が死んだあと娘が平穏に暮らしていけるとは思えない。そんな娘をひとりで残すくらいなら、少なくとも自分と一緒にいて幸せを感じていてくれる時に、自分の手にかけて命を絶ってしまった方が・・・。

いっぽんだって何もしなかったわけではない。ひまわり荘がなくなることになって福祉課を頼って別の施設に入れたけど、マコちゃんは馴染めなかった。夏目ちゃんに電話をして娘のことを頼もうともしたけど、希望に向かって歩み出した彼を引き留めるような願いは出来なかった。

がん患者の4人に1人はうつ病になると聞きます。自分自身がダメージを受けている時には思考がどんどん沈んで行ってしまうものです。私が未来ある子供たちの顔が浮かんで思いとどまったのと同じくらい、苦労する娘の姿しか浮かばずに手を掛けたいっぽんの苦悩も分かるような気がするのです。勝手な想像だと非難する方もいらっしゃるでしょうが、健常者も障害者もそれぞれに個性があるように、こう思う人もいるということです。


もとになった舞台劇の良さを取り入れた演出は喜劇的な要素もあり、日頃ほとんど障害者に接することの無い私にとって入りやすいものでした。貫地谷しほりをはじめとして、役者の方々の演技もみな素晴らしかった。この作品を観て涙したり考えたりすることは、決して無駄なことではないと思います。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 悲しい
  • ロマンチック
  • 切ない
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ