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潔く柔く きよくやわく (2013)

監督
新城毅彦
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3.24 / 評価:859件

秀作。潔く過去と向き合い、力強く前を向く

人の死という重荷を背負った男女を描いた人間ドラマ。
単純な純愛ラブストーリーなどではない。

15歳、高校1年の夏。カンナ(長澤まさみ)は幼なじみ・ハルタ(高良健吾)を交通事故で失う。
友人以上の存在だったが恋人というわけでもない。
お互いのことが好きで、キスをする関係ではあるが、恋人という関係までは踏み込めない。
そんな中途半端な関係の中、カンナは別の男子と花火大会に出かけ、その間にハルタは死んだ。

8年後、東京の映画宣伝会社に勤めるカンナは取引先のロク(岡田将生)と出会う。
このロクにも悲しい過去がある。

小学校2年の遠足の時、ロクのことが好きで彼に絡んで来る女子を道路に突き飛ばしてしまう。
そこに車が突っ込み彼女は即死。

ともに人の死について罪悪感を背負う2人。
お互いの過去を知り、似たものを感じ合いながら距離を縮めていく。

愛を深めていくという物語ではない。
喪失感と罪悪感がつきまとう過去を正面から見つめ、再生・成長していく物語である。

序盤の高校時代のエピソードのデキはよろしくない。
非常に薄っぺらく、じれったく、また彼らが高校1年生を演じていることに違和感。
中途半端な関係を口実にして、信義に反していくカンナの姿にも好感は持てない。

そんな彼女もハルタの死により自分の愚かさを知る。
彼女にその死の責任がないことは明白なのだが、彼女の時間はそこで止まる。
大人になり、働くようになっても、その罪悪感は彼女の中でくすぶり続ける。

大人になってからも変なシーンがあった。
映画宣伝会社に勤める彼女だが、会社の人々はゴキブリ退治で右往左往。
こんなだから変な宣伝が横行するのかと、ある意味納得もしたが。

しかしロクの過去が明かされてからは見事に引き締まる。
幼い頃とは言え、ロクにはその死に直接的責任がある。
その罪悪感を意識しながらも、ある時までは逃げていた。
幼いながらも彼女がどんなに自分を好きだったかを知り、彼は罪悪感と向き合うことにする。
重圧であった彼女の姉・愛実(池脇千鶴)との交流も、やがて彼の救いとなる。

「モテキ」で開花したがその後が続かなかった長澤まさみ。
若手実力派・岡田将生に釣り合うものかと不安視したが、本作の彼女は非常に素晴らしかった。

彼女の魅力は笑顔と美脚。
ドラマでは美脚を披露してくれているが本作ではほぼ封印。
しかし笑顔は惜しみなく振りまいている。
だがそれは単純な笑顔ではない。
「モテキ」以前の過去作では可愛いだけの笑顔を振りまくだけの駄演が目立ったが、本作ではその奥底にある罪悪感、揺らぎ、葛藤が垣間見える笑顔を見せる。
岡田将生とも十分張り合える演技を見せてくれた。

岡田将生は当然好演、また波瑠や池脇千鶴も好演、高良健吾も好演だが、やはり年齢的なギャップ感は否めない。

難点を挙げれば、まず偶然過ぎる再会があること。
いかにも漫画チックだ。
また、終盤の愛実の娘のエピソードは少々ミラクルじみていたし、またその関係に余計な詮索をさせる含みを持たせたのは頂けなかった。
ついでに言えば「ハルタ」とは「春田」、苗字だったとは驚いた。

そんな文句を付けたいところもあるが、真剣なドラマに心を打たれた。
特にロクが遺族と向き合うきっかけになる日記を読むシーンは涙が止まらなかった。

重い十字架を背負いながらも、過去を忘れず、向き合いながら、前を向いて生きていく。

「潔く柔く」というタイトルだが、潔さ(いさぎよさ)と力強さを感じさせる物語である。

先発のラブストーリーには興行的には負けているが、ドラマ性や演技などではこちらの方が格段に勝る。
感動の秀作である。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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