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オーソン・ウェルズ IN ストレンジャー

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5.0

計画の敗北、そして嘘と真実を分けないこと

1946年。オーソン・ウェルズ監督。アメリカで身分を隠して生きているユダヤ人虐殺を計画したナチの男(オーソン・ウェルズ)。地元の裁判官の娘(ロレッタ・ヤング)と結婚して再起を図ろうとするが、おとり捜査によって接触してきた昔の部下を殺してしまい、追跡者(エドワード・G・ロビンソン)に疑われて、、、という話。バレないために妻に嘘をついて仲間に引き込もうとし、その妻が良心の呵責に苦しむ。 嘘/真実を計画的に使い分けて生き延びようとする男に対して、嘘/真実の分裂に耐えられずに捨て身でその一致を迫る妻。映画においては常に最初の計画は狂っていくものですが、この映画でもウェルズの計画性(趣味の時計、時間のメモ)と大きな目のヤングの無計画性(ナチスと分かっても身をゆだねる)の対比が丁寧に描かれ、無計画性の勝利に終わっています。 そして追跡者もおとりの男にわざと見られたり、白昼堂々と街中で密談したりと、バレないようにという配慮をしない。表面と本心を分裂させない(探偵としてはどうなのかと思うけど)。つまり、嘘/真実を使い分けようとする者が最後に罰を受け、嘘/真実を分けない者たちが生き残るという映画でもあります。 極端な上からまたは下からのカメラが持ち味のウェルズ監督。今回も特に前半はサスペンスを盛り上げています。後半、高い時計塔の内部になると上から撮っても下から撮ってもそれほど極端な画面には見えないけれど(細長い建物だと上からまたは下からしか撮りようがない)、それにプラスして頂上の時計の周りをぐるぐる廻る天使像の横回転の動きを加えるところがにくい。いろいろやってくれます。

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