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ジンジャーの朝 ~さよなら、わたしが愛した世界
2013年8月31日公開

ジンジャーの朝 ~さよなら、わたしが愛した世界

GINGER & ROSA

PG12902013年8月31日公開

g04********

4.0

ネタバレ世界の終わりとは

生まれた時からずっと一緒で、互いを自分の半身の様に思いながら生きてきたジンジャーとローザ。 やがて思春期を迎え、2人の興味の対象は段々と離れ、 ローザはジンジャーの父親との恋にのめりこんでいき その事実はジンジャーを追い詰めていく。 劇中で何度もジンジャーは 「世界が終わる」と口にし、それを恐れ反核運動を行うことで食い止めようとする。 それはもちろん直接的には、核戦争によるこの世界の終わりのことだ。 しかしジンジャーが反核運動に熱心になればなるほど 世界の終わり、世界の終わりと口にすればするほど ジンジャーが本当に食い止めたかったのは 「この世界」の終わりではなく、 ジンジャーが今まで当たり前のものとして生きてきた「彼女自身の世界」の終わりに感じられた。 親に守られ、親友と笑い転げ、無邪気に明るいものにだけ思いを馳せていればよかったこれまでのジンジャーの世界。 ジンジャーが詩をつづるのは、 彼女の世界が変容していくにつれ崩れていく精神のバランスを繋ぎとめるかのよう。 心の中の形にならない、声に出せない気持ちを 少しピントをずらした世界(詩)で表現し、飲みくだす。 ちょっとした現実逃避。 途中途中でつづられるジンジャーの詩は、どこか頭でっかちで言葉が上滑りしているように感じたのだが 最後に病院の椅子で母の回復を待ちながら ジンジャーがつづった詩はすんなりと心に響いてきた。 それはジンジャーが一つの世界の終わりを経て、大人になり、 彼女が描く詩と彼女自身の世界のピントが合ったからなのかもしれない。 人に言えない秘密ができて、 尊敬していた父親を信じられなくなり、疎ましく自分を追い詰める存在だと思っていた母親を守らなければならなくなり、 自身の半身のように思ってきた親友と決別した。 それでも生は続き、痛みを伴っても生きていかなければならない事を受け入れた時、 ジンジャーの世界は新しい朝を迎える。 “どんなに辛くても痛みがあっても それでも私は世界を愛す” 健気で逞しいジンジャーの愛する世界が、厳しくとも実り多いものであるようにと思わずにはいられないラストだった。 ヒロイン2人がとてもよかった。 エル・ファニング演じるジンジャーの瑞々しい透明感が素晴らしい! 全体的にモノトーンの色合いの中でジンジャーの赤い髪と青みがかった瞳がとても美しく、 泣いても笑っても、その表情一つ一つに魅入られずにはいられない。 彼女の感性を受け入れ、温かく見守ってくれるアークおじさんたちと語らう時のジンジャーの表情には 溢れる知性とまっすぐなパワーが感じられて、なぜか胸を打たれた。 その時のジンジャーがとても素直に子供らしく見えたからだろうか。 アークおじさんが言うように、少女の時は少女のままでいていいんだよ。 いつか嫌でも大人になる時がくるのだから。 その反面「陰」のローザの持つ憂いある美しさもまた。 ジンジャーの様に外に外に広がるエネルギーではなく 内部に秘める情熱を持て余す様子が、早熟な少女特有の危なっかしい魅力は男が魅了されるのも納得。 ローザが欲しいのは世界の、見知らぬ人々の平和ではなく 今ここにある愛、自分と共鳴する誰かを愛して愛される事、永遠に。 後半ローザが薄っぺらく描かれているような気がしたのは少し残念だった。 それからもう一つ思った事。 「ママのようになりたくない」 「逃げ出す男(父親)の気持ちがわかる」 ローザとジンジャーは自分達の母親を指してそう言うが その無知な批判が少女らしくて微笑ましかった。 いつか自分達も年を重ね、母親になる。 その時になって初めて理解するのだ。 母親は「母親」という生き物なのではなく、若く輝いている今の自分達の生の延長線にあるのだと。 そして母親の気持ちも。

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