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もうひとりの息子
2013年10月19日公開

もうひとりの息子

LE FILS DE L'AUTRE/THE OTHER SON

1012013年10月19日公開

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4.0

ネタバレ『僕の両親?それとも、君の両親?』

 …あらすじは、解説のとおり。  邦画の『そして父になる』のような赤ちゃん取り違え事件発覚後の二家族の苦悩が描かれており、『そして父になる』の当事者は幼子だったが、本作では、未来に向けて一歩を踏み出そうとしている18歳の若者(ヨセフとヤシン)がその当事者だ。  そして、両者の間には根の深い問題が横たわっていた。  育てられてきた環境は勿論のこと、民族・宗教問題の根底から対立するヨセフ=イスラエル人(ユダヤ教)とヤシン=パレスチナ人(イスラム教)だったのだ。  取り違えられた当人はもとより、両家族の一人ひとりがアイデンティティを根底から覆される驚愕を禁じ得なかっただろう。  そうした中で、二人の若者は深く傷つき悩みながらも、ヤシンはヨセフのアイスクリーム売りのアルバイトを手伝ったりしながら、次第次第に心が打ち解け始める。  また、両者の産みの親の母親同士もお互いの心痛を察し合いながら歩み寄ろうとする。しかし、父親同士はなかなか現実を受け止められず、それに輪をかけていきり立つのがヤシンの兄。  これまでは仲の良かった兄弟だったが、兄はこの事実を境にして豹変し、弟のことを敵側の人間であると憎悪を露わにする。  話しが長くなりそうなのでこの辺で止めるが、このヤシンの兄もヨセフのある行動によって心の傷が癒え始め、軍の大佐であるヨセフの父親に通行証を発行して貰い、イスラエルを訪れる。  そして、これまでの弟とこれからの弟との3人で砂浜を散策中に、予期せぬ出来事が起こる。  ヨセフが暴漢にナイフで刺されてしまうのだ。  こんな事件なんて要らない、唐突だと思ったが、幸いにしてヨセフの傷は軽いものだった。  病院のベッドに横たわるヨセフにヤシンが言う。  『今、両親がこの病院に向かっているよ。』  それに対してヨセフは聞く。  『僕の両親?それとも、君の両親?』  そんな二人の弟の遣り取りを、ヤシンの兄が温かく見守る結末は、切ないながらも心温まる作品に仕上がっていた。

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