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もうひとりの息子 (2012)

LE FILS DE L'AUTRE/THE OTHER SON

監督
ロレーヌ・レヴィ
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  • みたログ 322

4.10 / 評価:153件

終わりなき対立の中で…

  • 一人旅 さん
  • 2019年5月13日 16時52分
  • 閲覧数 140
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

ロレーヌ・レヴィ監督作。

出産時に赤ちゃんを取り違えられた二組の家族の行く末を見つめたドラマ。

18年前、湾岸戦争の混乱のさなかに赤ちゃんを取り違えられていた事実を知ったフランス系ユダヤ人家族とパレスチナ人家族の関わりを描いた人間ドラマの傑作で、是枝裕和監督の『そして父になる』(13)を連想させる―“取り違えが生む悲劇と再生”が、ユダヤ人家族の暮らすテルアビブとパレスチナ人家族の暮らすヨルダン川西岸地区を行き来しながら映し出されていきます。

取り違えによる家族それぞれの混乱と苦悩、葛藤の日々に、イスラエル・パレスチナ間の積年の対立を背景として据えた人間ドラマとなっていて、18年間愛情を注いで育ててきた息子が敵国の人間であることを知った双方の家族の心の揺れを丹念に描写しています。

取り違えられた二人の青年がそれまで心の拠り所としてきた民族・信仰を含めたアイデンティティーを根底から覆される事態に苦悩する様子を描きながら、同時に、今まで育ててきた息子ともう一人の実の息子の存在に葛藤する両親、自分達の土地を占領し続けるユダヤ人に敵意を剥き出しにする兄、事の重大さを理解できず単に“お兄ちゃんが増えた”とだけ考える幼い妹の姿など、取り違え被害に遭った当の本人のみならず、両者の家族それぞれが抱える複雑な心情にまでしっかり焦点をあてた作劇となっています。

テルアビブの綺麗な街並みや解放感のあるビーチとは対照的に、高い壁で分断されたパレスチナ自治区の住環境は狭苦しく息が詰まりますし、通行証なしではイスラエルとパレスチナ自治区を行き来できないという不便な現実が今なお続くイスラエル・パレスチナ間の対立の根深さを象徴しています。しかしながら、取り違えの事実発覚に端を発する両家族の交流の積み重ねが、民族・宗教の対立を越えた相互理解を育ませてゆく様子に一筋の希望を見出すことができる作品で、子どもを愛せる・愛せないの理由に民族や宗教等の外面的事実は通用しないことを静かに提示した、中東の民族対立を背景にしながらも普遍性のある家族ドラマの傑作であります。

蛇足)
イスラエルとパレスチナ自治区は壁で分断されていても電話は普通に通じるのが驚き。

詳細評価

物語
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映像
音楽

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