ヒネくれた監督
- 映画太郎 さん
- 2018年1月4日 1時37分
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- 役立ち度 4
- 総合評価
主人公の手に焦点をあてて観れば理解がすすむ。その描き方が斜め視点だからわかりにくい。しかし、そこが面白いし、それがセンスなんだと思った。オンリーゴッド。僕が題名をつけるとしたら、汚れた手だな。その方がわかりやすい。
理解不能だとか、未完成な映画だなどとは思わない。完全に完成された映画。
ストーリー自体にコントラストをつけた方がもっと面白くなるのだろうが、斜め視点の映画なので、そんなストーリーにはできなかったのだろう。
でも、この監督は表現方法にコントラストをつける事が上手。
麻薬売人の汚れた手。神の威厳の化身である警官のナタで、腕を切り落とされる回想シーンが印象的。前半で汚れた手を椅子に縛られ、目の前で喘ぐ女性は女神。女神へ手を出そうとしても、汚れた手は太腿までしか伸ばすことはできなかった。汚れており、神聖なる女神に手は届かない。逆に悪の化身である母の体内には終盤どっぷり腕を突っ込んでいる。
仲間を撃ち殺し神の子(警官の子)を救っても、悪に手を染めた主人公は許されることはなかった。最終的には自ら腕を差し出し、自ら裁きを受けたと言った方が良いのかもしれないが。
通して、主人公の犯した罪に対する良心、赦し、後悔、懺悔等の葛藤を抽象的に描いている点は見事。
主人公を罪人とし、警官を残忍厳格な神として描く事で、どちらもまるで悪であると印象づけるような暴力的シーンが強烈であった。そんな描き方をするからストーリーはどうしても単調。
カラオケは神の説教を意味するのだろうか。
洋画版北野映画と言いたくなる。
撮り方、色彩云々ではなく、物事を表現する角度視点に凝っている芸術作品。そういう意味で、芸術がわからない人にとっては理解不能な作品。
抽象的な絵を見せて、核心まで説明してくれる映画ではないから、国語ができない人にも理解不能な作品だと思う。
娯楽映画として楽しむ作品ではない。わかってしまうとドライブよりも面白いと実感できる。二度目を観たいと思うのは娯楽性の高いドライブであるが。
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