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ジンクス!!! (2013)

監督
熊澤尚人
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  • みたログ 566

2.69 / 評価:470件

矛盾のある作品

  • bar***** さん
  • 2019年4月22日 0時44分
  • 閲覧数 899
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

ジンクス!!!。

私は内容がない映画だと思いました。

というのは、いろいろな理由があるからですが、一番は「情緒性」が主題になっているからですね。ただこの映画がとにかく悪いわけではなくて、この映画というかこのジャンルそのもの(少女漫画チックなので、少女漫画性とでもいえばいいんでしょうか……)に共通する特質、普遍性よりも特異的な個人の情緒を主題にするということが、私はあまり価値がないものと思っております。

なぜかといえば、それは「情緒」というものの移ろいやすさに原因があります。それは人間に共通の特性を表しておらず、一過性のもの、局所的なものでしかないからです。私がこういった性質の漫画が嫌いなのは、そういった理由のせいです。もちろん面白い漫画もありますが、それは(映画なのに漫画の話してすみません)「情緒」を描きながらもそれに固執していないから面白いと思っています。作品とか漫画の本質に切り込んでいる内容だから面白いのだと思っています。

恋愛映画にもいろいろあって、普遍性を狙った作品はどれも面白いです。なぜならそれは廃れる内容ではないからですし、局所的なものではないですから、観る人は誰も関心を持ちます。しかしこの映画はニッチです。たとえば韓国人留学生のジホの行動論や、お相手役の男の子たちの性格は、普遍的なものというより、それが作品内の人物らによって受け入れられて初めて価値を持つものです。ですからそれはいつどこでも価値があるものではなくて、時間と場所で相対的に正否が決められるものだと言っていいでしょう。誰もこの作品内の哲学を普遍的などとは同意しないはずです。

だとすれば、この作品の価値は何なのか? それは先ほど言った「情緒」です。つまり登場人物たちのその場その場における感情的色彩です。それは先ほど言った通り局所的なもので普遍性はありません。ですからそれは内容を持たず、ただ綺麗な色彩の夢想であり、曖昧なロマンティシズムなのです。ロマンティシズムにどういった価値を求めるのかは、享受者によって異なりますから、一概には言えませんが、私はロマンティシズムというのは夢想的で実のない遊びにすぎないと思っています。なぜなら主観性の強い概念であって、またその主観性すらも移ろいやすいものなので、ある年齢ではこういった作品が好きだったが、年齢を積み重ねた後では色あせて見える、ということがざらだからです。

この映画における技術において話をすると、演出は悪くないながらも、役者の演技を含める登場人物の描写は最低の一言に尽きます。というか、邦画のほとんどすべての作品がそうなのですが、登場人物はある一つの意味を持つ行動しかしてはならないという制限があるように思えます。それはどういうことかというと、例えば「悲しい」という描写をするならば、それ以外の感情を持っていないかのように必ず演技をするのです。しかし現実ではそんなことは決してありません。なぜなら「悲しい」と思いながらも、人間はいろいろな感情を掛け合わせるからです。悲しいときもあれば、嬉しいときもある。今悲しくても、未来はいいことがあるかもしれない、こう思うこともありますが、「悲しい」という思いに押しつぶされてしまう時もある、その時理性では「こんなことたいしたことないさ」と思っていながらも感情の強さに圧倒されてしまうのか、あるいは両感情が拮抗しているのか、「悲しい」という感情に「後悔」が混じっているのか、「恨み」が混じっているのか、それらが混じっているなら比率はどのくらいか、で様々な様相が出てくるわけです。普通の人間はそのほかにも系統づけられていない体験やそれらに誘発される感情があるのです。また習慣的なものもあるのです。そういったもの全てを表現するのは馬鹿馬鹿しいにしても、この映画およびほとんどの邦画はキャラクター性を強く表現し、なるべく伝達力のある説明的表現を重要視するあまり、キャラクターの感情を単一化し平板にしてしまうという最低の制作方針を取っています。人間というよりも、精巧な人形にすぎないと思います。

そういった手法が唯一成功を収められるのがコメディなのですが、コメディにもいろいろあって、この映画のように情緒的性質が重要視される作品の場合、必ず失敗するでしょう。なぜならそれは「情緒」をテーマに据えておきつつ、その「情緒」づくりがキャラクターの性質の単一化という人工的なものにすぎず、形式は重要視されながら内容が軽視されるという強い矛盾が潜んでいるからです。

その矛盾が違和感となって、この作品の質を低落させています。いつだって作品を駄作に変えるのは製作者の抱える「矛盾」です。矛盾はできるだけ取り除かれなくてはならず、そのためにこのような形式的性格の強い作品は反面教師として勉強しなくてはなりません。

詳細評価

物語
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演出
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音楽

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