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スティーブ・ジョブズ
2013年11月1日公開

スティーブ・ジョブズ

JOBS

1272013年11月1日公開

shi********

3.0

唯我独尊だからこそ先駆者となったが・・・

Macintosh、iPod、iPhoneなどで知られるアップル社の設立者で、2011年、56歳で死去したスティーブ・ジョブズの半生を描いた作品。 iPodを発表する場面から始まるが、晩年の姿を描いたのはこのわずかなシーンだけ。 本作はジョブズがアップル社を立ち上げ、追放され、そしてまたアップル社に戻るまでを描いている。 アップル社を立ち上げるまでは比較的丁寧に描かれているが、その後は足早。 嫌な奴、酷い奴、という言われ方をしているが、確かにそんな一面も描かれている。 意見の合わない技術者を罵倒して解雇したり、妊娠した恋人を捨てるなど、あまりに非情で人間性の低い部分も晒しているが、娘の名前を付けたコンピューターを開発したり、後にともに生活するところなど、人間的な部分も見せている。 ひとことで言ってしまうと「唯我独尊」。 だからこそ先駆者となりうるのだろう。 しかし大企業に急成長することで、皮肉にも唯我独尊のカリスマはその存在さえも疎まれる。 開発費だけは膨らみ、ビル・ゲイツのマイクロソフト社に後れをとるのだから、当然その居場所は危うくなる。 会社は株式を公開したこともあり、個人のものではなく、ビジネスのルールは容赦なく彼を追い詰める。 ジョブズ氏については病気療養での退任やその死を報じる報道で初めて知ったところが大きい。 アップル社を追われた後、数々のヒット作を生み出すピクサーを立ち上げたということもその時知った。 本作でもそのあたりのところが描かれるかと思っていたが、ピクサーのピの字も出てこない。 自ら立ち上げたアップル社を追われた後、どのような想いで生きたのか、また復帰後、iPodなどの開発はどのように進められたのか、など期待していた部分はほとんど描かれていない。 またビル・ゲイツに電話で啖呵を切る場面があるが、どのような「盗作」なのか、またその後の訴訟はどうなったのか。 知ってる人は知ってるのだろうが、知らない人には不親切な作り。 私が無知なだけなのだろうが、知りたかったことが知らずじまいなので消化不良感も残る。 特別に美化するわけでも礼讃するわけでもない姿勢には好感が持てるが、「伝記モノ」としては踏み込み不足の感が大きい。 人間スティーブ・ジョブズを描いたと言うより、急成長した巨大企業のドロドロした面を描いた作品。 ビジネスとは競争相手との戦いのいうのはわかっていたが、会社内部でも刺し合いが繰り広げられていることがよくわかった。 そんな刺し合いに翻弄されるのがジョブズがペプシから引き抜いたジョン・スカリー。 演じている役者が線は細いながらもなかなかいい味を出していて、誰これ?と注目していたがエンドクレジットで驚いた。 マシュー・モディーン? あの「バーディ」とかの? 随分と久しぶりな気がしたが「ダークナイト・ライジング」にも出ていたんだね。 なかなかいい感じに歳を取ったものだと感心。 ジョブズを演じたアシュトン・カッチャーも好演。 わずかな晩年シーンでも似ていたが、エンドクレジットに出てくるジョブズ自身の若い頃の写真を見て驚いた。 カッチャーが似ていると言うより、ジョブズの若い頃がアシュトン・カッチャーそっくりと思ってしまった。 それとは逆に「アシュトン・カッチャーが若い頃のスティーブ・ジョブズに似ている」と思える方、つまり若い頃のスティーブ・ジョブズの顔にも馴染みのある方には、本作はより興味深く、また感慨深いものがあるのかもしれない。 ビジネス記としてはなかなかのものではあるが、伝記としては今一つと言った感の作品だった。

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