ここから本文です

カノジョは嘘を愛しすぎてる (2013)

監督
小泉徳宏
  • みたいムービー 598
  • みたログ 2,895

3.46 / 評価:2487件

カノジョが愛した嘘は、本物の愛だった。

  • 映画生活25年 さん
  • 2013年12月29日 4時58分
  • 閲覧数 4640
  • 役立ち度 54
    • 総合評価
    • ★★★★★

佐藤健はいいと思うし、窪田正孝の実力の高さも承知、ヒロインも可愛いが、カノジョをイケメン兄ちゃんが取り合うチャラくて薄いラブストーリーかと思い、当初は鑑賞予定に入れていなかった。
「プレーンズ」と「ダイナソー」の後の始発までの時間潰し的に鑑賞したのだが、これが意外にもかなりの秀作。
映画とは観てみるものだとつくづく思う。

アキ(佐藤健)は人気バンド「クリュード・プレイ(以下クリプレ)」に曲を提供してるクリエイター。
クリプレは高校時代に仲間ともに作ったバンドだったが、デビュー時にある事情で脱退。
今は名前こそ出してはいるが、素顔は晒さずに活動している。
その代わりに加入したのが天才ベーシストのシンヤ(窪田正孝)なのだが、彼とメンバーの間にはやはり溝がある。

恋人マリ(相武紗季)との関係もこじれ、音楽業界に嫌気が差していた時、理子(大原櫻子)と出会う。
アキは名前も偽り、正体を明かさずに交際することになる。
音楽とは無関係の彼女との交際は、彼に新鮮さと安らぎを与えていたが、自分の嘘を信じ切る健気な彼女に心も痛む。
しかし理子も実はバンド活動をしており、路上ライブで奇しくもクリプレのプロデューサーである高樹(反町隆史)にその力強い歌声と才能を見出される。

アキは嘘をついたままリコと付き合うが、その嘘がいつまでも引きずられることはない。
中盤で正体が明らかになるが、これをダラダラと引きずるだけの薄っぺらいラブストーリーならば高評価はしない。
正体を知られたアキはまたさらに嘘をつくことになるのだが、これが切なくて切なくてたまらないのである。

本作では音楽業界の裏側も描かれ、そこでもしっかりと人間を捉え、秀逸なドラマに仕上がっている。
アキ、シンヤ、高樹の音楽を中心にした関係が実に興味深い。

音楽をビジネスと割り切る高樹。
高樹のやり方に反発するアキ。
メンバーだが仲間ではないという疎外感を持つシンヤ。

それぞれお互いに反目し合うところはあるのだが、それぞれの手腕や才能は認めている。
高樹は音楽を冒涜する存在でもあるのだが、才能を見出し売り出す手腕は確かで、アキもシンヤもそれを認めている。
その高樹が才能を認める天才ベーシスト・シンヤも、曲を生み出すアキを天才と評価し、アキもシンヤの腕前を認めている。
彼らは「マヌケ」など酷い言葉で相手を評しているのだが、お互いの才能を認めている。
そんな潔さがさり気なく表現されるところが実に見事。

また音楽も良かった。
クリプレやリコの曲も迫力があり見事だったが、劇中に使われる音楽も、日本恋愛映画にありがちなノンビリほっこりするぽんぽこ音楽ではなく、しっかりしたもの。

音楽を題材にしているだけのことはあり、音楽に真剣に向き合おうという姿勢が見える。
例えば、作曲という才能の描き方も非常に難しかったと思うが、音楽が湧き上がってくる、または降りてくるという感覚がよくわかる描写をしていた。
また天才ゆえに、どんなに辛い時でも音楽が湧き上がってしまう悲しさも見事に表現されていた。

難点を挙げれば、ペプシの宣伝が鼻についてしまったところ。
リコがイベントを抜け出してアキと会うところは、しっかりボトルを持ち上げていて宣伝丸出し。
映画としては非常に素晴らしいシーンなので余計に残念に思えた。
このあたりは業界のしがらみ見たりと割り切るしかない。

ヒロインを演じた大原櫻子はよく頑張っていた。
たどたどしさはあるが、そこがまた初々しくもあり非常に好感。

窪田正孝もやはり見事な演技。
ベーシストとしての自分の実力を自負しながらも、アキには嫉妬と羨望の眼差しを向ける。
また業界の悪しき部分に嫌気を感じながらも、その部分があるからこそ自分が生き残れることも理解している。
狡猾で野心的、またグループの他のメンバーとは自ら一線を画すクールな生き方をしているが、同時に疎外感も自覚している。
そんな野心の中に嫉妬や羨望、そして孤独を一瞬だけ垣間見せる表情がやはり素晴らしく、見事な存在感だった。

また佐藤健も驚くほど素晴らしかった。
以前彼のインタビュー番組を見たが、アクションに対する役者魂には凄まじいものがあり、また大河ドラマのワンシーンも紹介され、その演技力の高さに驚かされた。
本作ではもちろんアクションなど披露しないが、元恋人に対する苛立ち、高樹との確執、嘘をつく罪悪感、音楽への想いなど、伝えるべきものをしっかりと表現していた。
特に憔悴しきった表情は驚嘆するほどの素晴らしさだった。

ややもすれば薄っぺらいものに成り下がったかもしれない作品だが、各人物の人間関係をしっかり捉え、芯の通った作品に仕上げた演出は見事。
軽く見ていたせいもあるが、予想外のデキに驚かされた秀作であった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 未登録
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ