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アナと雪の女王 (2013)

FROZEN

監督
クリス・バック
ジェニファー・リー
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3.66 / 評価:5,945件

新ディズニーを感じさせる傑作 変革と踏襲

  • 映画零号 さん
  • 2014年3月17日 19時44分
  • 閲覧数 4235
  • 役立ち度 52
    • 総合評価
    • ★★★★★

今作は、ディズニーにとっては、自己変革的な映画であり、自己踏襲的な映画でもある。

まず自己変革的なところをいうと、
触れるものを凍らせてしまうエルサの能力が、呪いによらない先天的なものだということ。
ディズニー映画では、呪いといえば因果応報で魔女で掛けられたりと寓話的な要素となる。
が、現実の世界では、性格や身体的な特徴など、先天的なものも多くあるわけで、全てに理由付けがあるわけではない。
民話や童話を基に、ファンタジーで理想的な物語を描いてきたディズニーにとっては、
呪いではない先天的な特質を認めたというのはなんともリアリティがある。

また実写作品「マレフィセント」では、ディズニー映画では悪者とされていた「眠れる森の美女」の魔女が主人公である。
今作のエルサも呪いをもたらす側であり、周囲から怪物と疎まれる存在となる。
呪いの源となる者ですら、元々は心清らかな人物であったり、先天的なその能力に苦悩するものだったりという背景を描き、同情の念を抱かせる。
今作では、根っからの悪者は存在しない(いるにはいるが、救いようはある)。
これもまたリアリティのある設定で、今までのディズニーが持っていた勧善懲悪の物語構造を部分的に解体する。

そして、ディズニー作品では、これまで若い男女の運命的なラブストーリーを物語の基本としてきたが、
今作では、Wヒロインによる姉妹愛がメインテーマとなる。
「愛」の解釈の幅を広げたという意味で、新しい試みだったといえる。
キスで呪いを解くというディズニーお気に入りの設定すら、今作の中ではパロディ的に扱われ、恋愛一辺倒のお話は否定される。
姉の力により、呪いを受けてしまったアナに対して、周りの登場人物たちは、王子による真実の愛のキスを!、と囃し立てる。
しかしその呪いを解くのは、いつものお決まりの王子とのキスではなくて...
今作では、「愛」を一目惚れによる唯一無二の運命的な出会いではなく、自己犠牲の精神によるお互いを思いやる気持ちとして描いている。

また王子にしても、容姿の整った一国の正統な継承者ではなく、
上に12人の兄がおり、自国では王位を継承できず、婿入りしなければならないというなんとも生々しい設定がある。

さらには、
映画の後半で、ミュージカルシーンがなくなり、登場人物の明確な心情描写が減っていくのも特徴だ。
今までのディズニー映画と比べ、あまりにしっとりし過ぎていないか。
前半で張り巡らした脚本上の伏線や設定を紐解いていくことに注力し、深堀りしたべたべたなドラマにはしない。
クライマックスに向け、テンションを高めていく普段のディズニー映画とは、作り方のバランスが異なる。

その一方で、
ディズニーがこれまで築いてきたファンタジーの楽しさは忘れない。
冒頭で示される、まだエルサとアナが仲良しだった頃の描写。
エルサは自分の能力を使って、アナと雪遊びをしたり、雪だるまの人形を作ってあげたりする。
ディズニーが描いてきたマジカルでファンタジックな楽しさこそ、理屈なしに感じられるプリミティブなものだ。

そしてやはりミュージカル。
「メリー・ポピンズ」「リトル・マーメイド」「美女と野獣」などに代表されるディズニーのミュージカル傑作たち。
いくらピクサーにおされようと、この歌と踊りによる感情表現の楽しさは忘れない。

さらには、「頭の問題は簡単に解決できるが心の問題はそうではない」、だったり、
「愛とは自己を犠牲にできる気持ちのことだ」、といったようにストレートに信条を示すところも変わらない。

「アナと雪の女王」は、
これまでのディズニーの伝統を打ち破りつつも、ファンを納得させる正統性を持っている。

時代が変わりゆく中で、その当時代感もしっかり取り込んでいる。
エルサの能力は抑圧であったり、もしかすると性格難や心身障害のメタファーともとれるかもしれない。
画一した価値観が薄れゆく世の中で、ディズニーのような巨大スタジオがその多様性のリアリティを認め、
自ら作り上げてきた文法を解体するのはとても画期的に思える。

さらに今作が、世界興行収入10億円を越え、アニメ映画歴代最高に到達しようとしているのも驚きだ。

とにもかくにも、今作は、ディズニーの変革と伝統を感じさせる、なんとも出来の良い作品である。

詳細評価

物語
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音楽

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