大森監督の郷土愛をみた。
- kokokokoko2598 さん
- 2014年6月6日 3時39分
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演出・脚本・原案の大森研一監督の前作「ライトノベルの楽しい書き方」を、主役の俳優さん目当てで見たことがある。前作は大森監督の劇場公開第1作目だったと思うが、素人目にも明らかに低予算なのが分かるにも関わらず、随所に工夫をこらし、演出によってキャスト達のチャームポイントを十二分に引き出し、何度も見たくなる素晴らしい作品に仕上げていた。この監督は今に世に出てくるだろう・・そうかすかに予感したのを覚えている。
満を持して迎えた2作目「瀬戸内海賊物語」は、原作ありきの映画業界に挑戦するかのごとく、監督自身の郷土愛を詰め込んだオリジナル作品だ。おそらく、大森監督のふるさとを愛するエネルギーが「映画によってますます地元を盛り上げたい!活性化させたい!」という情熱へと変化し、村上水軍という歴史的事実を絡ませての「一大冒険物語」を生み出すこととなったに違いない。
本作は、歴史アドベンチャーものであるが、大げさにCGが使われているわけでもなく、これみよがしに空撮を入れ込むでもなく、派手な映像的演出がなされているわけでもない。またしても予算は少なめなのだろう。しかし、見終わったあとの印象は驚くほど色鮮やかだ。きめ細やかな演出によって描かれる活き活きとした子供達の様子、もう一人の主役ともいっていい美しい瀬戸内の海、島々の風景がいつまでも心に焼き付いて離れないのだ。
波の音、楓が島の道を走る音、オリーブの枝が風に揺らぐ音は、いまだに余韻として耳に残っている。
ポスターをみて、単なる歴史映画と思っている人はかなりいるだろう。だが、この作品は、ただの歴史ものから一歩すすんでいる。過去と現在の二つの時間が交錯し、財宝の伝説も本当にありえなくもないと感じさせる夢溢れるストーリーになっている。歴史ものでもあり、心躍る冒険ものでもあるのだ。
しかも舞台となった瀬戸内海は、ただの風景ではない。「演出によって一番魅力的に見えるように意図的に切り取られてそこに映る、さりげなくも圧倒的な風景」なのだ。これは地元出身の監督のなせる技だろう。そこには「世界に自慢したい瀬戸内海とその島々」があった。
こんな美しい場所ならば、秘密の財宝が眠っているという期待を抱いても無理はない、そう思えてくる。
本作もまた、演出が随所に冴える心に残る素晴らしい作品だった。
大森監督の次回作にも期待したい。
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