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少女は自転車にのって (2012)

WADJDA

監督
ハイファ・アル=マンスール
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3.94 / 評価:158件

解説

厳格な宗教戒律によって女性の行動が制限されているサウジアラビアを舞台に、自転車に乗る夢をかなえるため奮闘する少女の姿を描いた感動作。自転車を手に入れるためコーラン暗唱大会に挑む少女の視点を通し、因習を重んじるイスラム社会で女性が置かれた不条理な現実を浮き彫りにする。サウジアラビア初の女性監督ハイファ・アル=マンスールが全て国内で撮影した同国初の長編作で、ベネチア国際映画祭をはじめ世界各地の映画祭で絶賛された。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

サウジアラビアに暮らす10歳の少女ワジダ(ワード・モハメド)は、男友達と自転車競走をするため自転車を買うことを決意。母親(リーム・アブダラ)にねだるも女の子が自転車に乗ることに反対され、自分で費用を工面しようとするが目標額には遠く及ばない。そんな折、学校でコーラン暗唱大会が開催されることになり、ワジダはその賞金で自転車を買おうと懸命にコーラン暗唱に励む。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2012, Razor Film Produktion GmbH, High Look Group, Rotana Studios All Rights Reserved.
(C)2012, Razor Film Produktion GmbH, High Look Group, Rotana Studios All Rights Reserved.

「少女は自転車にのって」サウジ初の女性監督が描く、10歳のヒロインの大いなる躍動

 傑出したヒロインの誕生である。キャメラはまずその足元をしっかりと映し出す。整列し歌声を響かせる少女達は誰もが黒靴を履いている。が、主人公ワジダだけはスニーカーだ。このワンショットで静の中に動がほとばしり、やがてスクリーンには彼女の天真爛漫な表情が広がっていく。このナチュラルな描写力。本作でサウジ初の女性監督としてデビューを飾ったハイファ・アル=マンスールの才能を見せつけられた思いがする。

 ワジダは賢く並外れた行動力を持っている。そんな彼女が手に入れたくてたまらないもの、それが自転車だった。どうやら男の子と競争がしたいらしい。しかしここはサウジアラビア。戒律厳しいこのイスラム社会では異性と遊ぶことも、女の子が自転車に乗ることもままならない。だがそう諭されても彼女は決して諦めず、自転車のために小金を稼ぎ、さらにはコーラン暗唱大会の賞金に惹かれて猛練習を開始するのだ。

 もちろん自転車は糸口に過ぎない。少女の真っ直ぐな眼差しは他にも女性の前に立ちはだかる数々の壁をつぶさに視覚化していく。そこには多くの文化的制約が横たわり、また一夫多妻制をめぐる母娘の涙にはやり切れない想いが溢れるばかり。ただし本作はそこで生じる感情を怒りへ誘うことはしない。むしろ全てをワジダの豊かな感受性と大いなる飛翔力に託することで、作品に爽やかな風を吹き込ませるのだ。そこにこそ勝因がある。

 宗教を尊びつつも、譲れないものは絶対に譲らない。自分の足で立てるよう茶色い大地を入念に踏み固めていくこのスニーカー少女の闘いに、イスラム社会の未来を担う新たなパワーの台頭を見た。映画館設置の禁じられた国からこんな傑作が生まれるとは、まさに奇跡というほかない。(牛津厚信)

映画.com(外部リンク)

2013年12月5日 更新

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