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百瀬、こっちを向いて。 (2013)

監督
耶雲哉治
  • みたいムービー 99
  • みたログ 900

2.58 / 評価:754件

心とエネルギー

  • raz******** さん
  • 2021年3月27日 17時12分
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

偽装カップルで疑似恋愛した高校の頃を回想する話。

ストーリー的には、なぜ主人公が小説家として本を出版できるくらいまでに大成できたのかという理由を語るかのような話になっている。結論から言うと、主人公はまだ高校の時の(偽装)彼女に未練があって、その想いが作家活動の原動力になっていたんだっていうことが分かる流れ。



恋愛をするとパワーが自分の心の中に湧き起こるっていうのは一般的にあることで、この主人公も最初は自称LV2の雑魚キャラだったのに、映画の終盤にはあの尊敬するラスボス先輩に盾突く勇気を得ている。

でも、そのパワーは本来ならば好きな相手のために使うべきだったし、ラスボス先輩からは俺を殴れって言われたのに結局殴れずにいて、パワーを発散する場を逸しパワーが心の中にとどまり続けた結果、そのパワーはその後の主人公の作家活動におけるエネルギー源になったという流れがストーリーからは浮かび上がる。

作中に出てきた森鴎外の舞姫は、鴎外自身の実体験がベースになっているという説があって、この主人公もまた同じように自分の実体験が執筆活動の原動力だったという鴎外との類似性をストーリー全体で匂わせている。

作家になることは主人公にとってはゴールであるが、しかしすでに映画の最初の時点ですでに主人公は作家になっていた。ゴールに到達し、人生における一つの節目を迎えた主人公が、じゃあ次はどこに行くのかという話ともリンクしていて、次は青い花(夢の中で見た青い花を探して各地を旅するという話)だと主人公自身が語っている。



ラスボス先輩の彼女はホオズキの花言葉(浮気)のことを知っていてそれを先輩にプレゼントした。そしてそのことはまだ内緒だと言って主人公に微笑んだ。あの頃言えなかったことは、いまでも言えなかったりする。

もしも百瀬と再会したとき、主人公はあの頃言えなかったことを今なら言えるだろうか。

というかたぶん主人公はもうあの頃の恋心は自分の中には残っていないと思っていて、次は青い花だと言っているのに、それが百瀬とリンクしていることにも気づいていない様子だった。クラスメイトだったLV2仲間の田辺とも、卒業してからは全く交流がない状態だったし、主人公は作家としての人生に埋没していた感がある。

ところが、映画のラストシーンで百瀬に似た女性とすれ違う。そこで「青い花=つゆ草(花言葉は懐かしい関係)」の情景が主人公の心の中に溢れ、ようやく、青い花と百瀬が主人公の心の中でリンクしてエンディングを迎える。

主人公は青い花を次の題材として選定したときに百瀬のことを意識したわけではなくおそらく別の理由で選んだのだが、映画のラストシーンではそれを選んだのは無意識的に百瀬を求めていたからだと自覚したように思われる。

だから、ラストシーンの主人公の苦笑は「なんだ俺の中にまだ残ってたんだ!」という再発見の笑みだと僕には感じた。主人公は自分の心の中にあったものをすべて本に書いて吐き出したはずだったのに、それでもまだ自分の心の中に何かが残っていたという”新しくてそして古い”気づきを得たわけだ。

この映画のストーリーは”ゴールを迎えた主人公が、スタート地点に戻って、そこでまた自分自身を再発見して、次のゴールを見つけた”という流れになっている。当然ながら新しく見つけたゴールはまだ達成していないので、観客である僕は若干もやもや感が残る。だからあまりスッキリとはしない。

だが、このストーリーの文脈においては、そのもやもやは”心のエネルギー源”だと考えるべきで、”次へ進め”と観客の背中を押しているかのようだ。

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