ここから本文です

her/世界でひとつの彼女 (2013)

HER

監督
スパイク・ジョーンズ
  • みたいムービー 743
  • みたログ 2,959

3.43 / 評価:1884件

解説

『かいじゅうたちのいるところ』などの鬼才スパイク・ジョーンズが監督と脚本を手掛けたSFラブストーリー。人工知能型OSの声に惹(ひ)かれる主人公と、生身の女性よりも魅力的なシステムとの恋のてん末を描く。『ザ・マスター』などのホアキン・フェニックスが主演を務め、彼が恋心を抱く声の主を『マッチポイント』などの女優スカーレット・ヨハンソンが好演。近未来的な物語に息を吹き込む彼らの熱演が胸に響く。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

近未来のロサンゼルスで、セオドア(ホアキン・フェニックス)は相手に代わって思いのたけを手紙にしたためる代筆ライターをしていた。長きにわたり共に生活してきた妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、悲嘆に暮れていた彼はある日、人工知能型OSサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)と出会う。次第にセオドアは声だけで実態のない彼女の魅力のとりこになり……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

Photo courtesy of Warner Bros.
Photo courtesy of Warner Bros.

「her 世界でひとつの彼女」SF的想像力を通じて愛する他者の喪失を描いた、美しく繊細な作品

 「ときおり僕は、自分が一生のうちで味わうべき感情をすべて経験し尽くしていて、もう新しい感情は得られないのではないかと思う」と、主人公の男性セオドアは言う。観客はその言葉を、自分自身に置き換えざるをえない。人を愛する気持ちは、いつか凍りつき、涸れてしまうのだろうか? スパイク・ジョーンズ監督の新作「her 世界でひとつの彼女」は、スタイリッシュな映像やSF的想像力を通じて他者の喪失を描いた、美しく繊細な作品である。

 物語は、妻との別離によって精神的な痛手を負った主人公を描く。実際に経験してみて初めて、喪失がどれほどつらいかを思い知らされ唖然とするのは、誰しも同じだ。人とふれあい、関係を持つことには、大きなよろこびと同時に耐えがたい孤独と苦痛がともなう。その記憶が美しければ、より痛みは増していく。だからこそ、結婚生活に失敗した主人公が、自分の心が凍りついたように感じ、もう愛はこりごりだと立ちすくんでしまう気持ちがよく伝わるのだ。

 なぜ私たちは、これほどに苦しみながらも他人を求めるのだろう? 劇中に登場する人工知能型OS(コンピュータ)との恋愛関係は、コミュニケーションの本質を抉るユニークなモチーフだ。観客はみな、どうして他者が必要なのかという身も蓋もない疑問を抱えながら、ただスクリーンを眺めるほかない。小型のイヤホンを耳に装着し、OSと楽しげに会話する主人公を見ながら、たくさんの人が「これは私自身の姿ではないか」と感じるはずだ。

 スパイク・ジョーンズの元妻であるソフィア・コッポラは、夫と共に訪れた東京で、ひとり置き去りにされた体験をもとに「ロスト・イン・トランスレーション」(03)を撮った。本作は、そのアンサーにも見える。主人公の抱えた心の傷の深さだけではなく、かつてパートナーであった女性への真摯な感謝にも満ちたこの物語は、まるで、ふたりの映画監督のあいだで交わされるパーソナルな手紙のようであり、見る者の心を打つのだ。(伊藤聡)

映画.com(外部リンク)

2014年6月26日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ