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GODZILLA ゴジラ (2014)

GODZILLA

監督
ギャレス・エドワーズ
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  • みたログ 3,940

3.18 / 評価:3,773件

日本人として怒りを覚えずにはいられない

  • too***** さん
  • 2014年6月28日 0時53分
  • 閲覧数 69552
  • 役立ち度 636
    • 総合評価
    • ★★★★★

こんなゴジラは観てはいけない。
いや、むしろ観て怒るべきか―。

1954年の初代ゴジラの公開から60年の時を経て、この夏日本公開となるハリウッド版ゴジラ。そのネット記事を読んだ妻が、「初代ゴジラは、水爆実験によって眠りから目を覚ましたっていう設定だったのに、今度のゴジラは『あの水爆実験は、実はゴジラを殺そうとしていた』っていう設定になってるらしいんだけど、それってどうなの?おかしくない?」と、納得がいかない様子。「まあ、観てみないと分からんし、評価は結構良いみたいだよ」と返したものの、なんだか嫌な予感がつきまとう。

怪獣映画の元祖でありながら、核兵器や戦争 の怖ろしさ、愚かさを真正面から描いた昭和の名作、初代ゴジラの魂が果たして受け継がれているかどうか。ゴジラファンとしては どうしても気になるところである。その後、いち早く鑑賞の機会を得て、待望のハリウッド版ゴジラを観たのだが…結果は、残念ながら妻の心配したとおりとなってしまった。

映画は古い記録映像コラージュのオープニングから始まり、やはりゴジラを殺すために水爆実験が行われる様子が映し出される。続く序盤部分では日本を舞台に、地震による原子力発電所の臨界事故(結局地震が原因ではなかったのだが)に始まり、原子炉の炉心近くに取り残される人々、爆発し倒壊する原子炉建屋や放熱塔(この原発は、1979年にアメリカで事故を起こしたスリーマイル島原子力発電所にそっくり)、放射能汚染による立ち入り禁止区域など、誰がどう見ても福島第一原子力発電所事故を連想させる展開と描写が続く。製作記録を読むと、脚本が執筆されたのは2010年の後半から2012年の後半にかけてとなっており、2011年3月11日の東日本大震災発生後、その要素が脚本に取り入れられていったことは想像に難くない。

にもかかわらず、である。そこからは核兵器や原子力の怖ろしさ、人間の愚かさや悲しみはほとんど伝わってこない。主人公の父親(アメリカ人)が目の前で妻を失うものの、劇中に日本人はほとんど登場せず、日本で起きた事故なのにそこで暮らす日本人の生活や悲しみは一切描かれない(自粛して描かなかったかもしれないが)。その後も全編を通して、津波や避難所、核貯蔵施設など、自然災害や核をイメージさせるシーンや言葉が次々と登場するが、これらは単なる物語のネタとして扱われるだけである。2万人近い犠牲者を出した未曾有の自然災害からわずか3年たらず。今も続く福島の状況を考えると、この取り上げ方はあまりに酷い。ハリウッドにとって、東日本大震災や原発事故がいかに対岸の火事として見られているかがよく分かった。あげくヒロシマまでとってつけたような形でエピソードだけが登場し、日本人として激しい怒りを覚えずにはいられない。

唯一存在感のある日本人として登場する芹沢博士役の渡辺謙は、科学と人間の罪を背負ってゴジラと心中した初代ゴジラの芹沢博士と違い、その場その場で目を見開いてうめくだけで、映画の中でほとんどなにもしない。まるで日本の記憶遺産の一つともいえるゴジラが目の前でハリウッドに蹂躙されるのをなすすべもなく立ち尽くして見ていることしかできない日本人の姿そのものであるかのように。我々は、いつもこうやって大切なものを取り上げられ、無残に踏みつけられる。製作総指揮に日本スタッフ(「ゴジラ対ヘドラ」の監督など)が名前を連ねている にもかかわらず、なぜこんなことになってしまったのか。こんなことならモスラでもキングギドラでも登場させて、可愛いミニラが口から輪っかの光線をポコポコ吐いてる子ども向けゴジラ映画を作ってくれた方がよっぽどましである。
思えば世界トップクラスの軍備と核兵器、そして原子力発電所保有国のアメリカにまともなゴジラ映画が作れるはずがなかった(監督はイギリス人だが)。
そう、アメリカにゴジラ映画は作れない。ゴジラがオリジナルに近い姿をしていようがいまいが関係ない。強者の目線でゴジラを描く限り、核や戦争、原子力の問題から目を背け続ける限り、本当のゴジラ映画は作れない。そしてそれは、今の日本にも全く同じことが言える。いつの日か、現代の日本でしか描けな いゴジラが日本から誕生する日を夢見ずにはいられない(そんな必要自体が無くなるのが一番だが)。

初代ゴジラのイメージを踏襲しており、期待が大きかっただけに感傷的なことばかり書いてしまったが、それを抜きにしてもそんなに良い出来栄えとは思えなかった。リアリティや盛り上がりの無さ、もう一種の怪獣の造形や習性の目新しさの無さ、家族の描き方など、全体的にありきたりでやや退屈な内容であったように思う。

願わくば、東日本大震災に遭われた方々、福島で暮らす方々、暮らしていた方々がこの映画を目にすることが無いよう祈るばかりだ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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