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8月の家族たち (2013)

AUGUST: OSAGE COUNTY

監督
ジョン・ウェルズ
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  • みたログ 1,007

3.27 / 評価:530件

手放すことは、自由になること

  • R_ILM&M さん
  • 2018年8月25日 9時21分
  • 閲覧数 1218
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

ジメジメとした暑さの中、ドロドロな、とはいっても、どこにでもいそうな(いや、流石にいないか?)…そんな家族関係を描いた群像劇です。登場人物が多く、それぞれのエピソードが描かれる作品なので、今回は特に印象に残ったバイオレットとバーバラの関係、そしてバーバラの一家を中心に。

「ウチワサボテンを回る、ウチワサボテンを、ウチワサボテンを」

そんなT・S・エリオットの引用から始まる今作。

ガンで闘病中の酷く毒舌な母親バイオレット、そんな彼女に食事中ですらビクビクする家族たち。彼女の言葉は平気で人を傷つけます、胸糞悪さすら感じさせる彼女は人を支配する。

潔癖で独善的な長女バーバラ。相対的に、かなりまともに映る彼女ですが、全てが正しい姿でないと落ち着かない。その堅苦しさに疲れられたのか、彼女は夫ビルに不倫をされてしまう。それも娘とさほど変わらない年齢の女性と。

そんな両親の姿を間近でみてきたバーバラとビルの娘、ジーン。そりゃあ、ただでさえ反抗期なのに更にそんなことされては…ああもなりますよね。

この映画は夏の季節、父べバリーの失踪をきっかけに始まります。彼は穏やかで、知的で、誰からも愛される人。娘達にはもちろん、ネイティブアメリカンの使用人、そしてバイオレットからも。

そうして葬儀に集められた家族の姿、そしてその家族たちがその暑さに包まれたオセージ郡の「家」から解放されていく姿が描かれます。

「急いでたのはそのため?さぞかし大事な番組のようね。」
「1925年のオペラ座の怪人、カラーが復元されてるの」
「それじゃ、つまり、パパと店に寄るのが嫌だと怒り…こっちを見なさいよ。おじいちゃんの葬儀が遅いと不機嫌だったのは、これが原因?このオペラ座の糞怪人を見るためだったってわけ?」
「その通り」

葬儀中はずっと不機嫌で、終わったと見たらすぐに帰ろうと言い出す娘。父親の葬儀を蔑ろにされたら堪ったものではありません。けれどジーンにしてみれば、この薄気味悪い家族たちから少しでも現実逃避したい。そんな気持ちが垣間見えるシーンなのに、話の争点は飽くまでもオペラ座の怪人。本当にくだらない、そのくだらなさに、無償に虚しさを感じるのです。

「世の中はどっちつかずで曖昧なのよみんなその中で生きてる。姉さん以外は。私も天使じゃない。自慢できないことだってしてきた。姉さんには決して言えないようなこと。いつかまたやるかもしれない。だって、時にはそこまで追い込まれるものだから」

三女のカレンの恋人がジーンに手を出す。その恋人を匿うように逃げていくカレンの最後に残した言葉。バーバラの価値観が崩される瞬間。それは決して正しいとは言えない、でも確かに、真実ではある、そんな価値観。

次々に去っていく家族たち。ヴァイオレットとバーバラから逃げて行くかのように。そんな中バーバラはヴァイオレットの大きな大きな過ちを知る。禁忌とも言えるそれは決して許すべきでも許されるべきでもありませんでした。なぜ彼女はあそこまでのことをしたのだろうか…そう考えるとやはり、夫べバリーの浮気、それによる不信感、募っていく恨み、そういったことがあったのだとは思います。ヴァイオレットのべバリーへの愛は紛れもなく真実だった、けれどそれでも彼女の喪失感と激情は抑えられなかった。そして遂にバーバラも…

それが正しいのか、間違っているのかなんてわからない。けれど、手放すことは、自由になること。そして人生はオセージ郡の草原のようなもの。暑苦しく、瑞々しさの欠けらも無い、けれど、それはどこまでも、どこまでも続いていく。行くべき場所はないけれど、そこに留まる必要も無い。だって大地はどこまでも繋がって、自由に走ることができるのだから。

そして、何よりも主題歌によって、全てが救われる映画でもありました。空っぽで、虚しく、どこまでも呑気。まさにアメリカの音楽だなぁと。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 不気味
  • 恐怖
  • 勇敢
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