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サクラサク (2014)

監督
田中光敏
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  • みたログ 198

3.26 / 評価:133件

敦賀、5つの心をつなぐ旅

  • UrbanDockGoer さん
  • 2014年4月6日 0時51分
  • 閲覧数 1456
  • 役立ち度 12
    • 総合評価
    • ★★★★★

このところ、いい作品に多くめぐり会えて嬉しい限り。本作も心に染みる作品だった。

先月“ネブラスカ 2つの心をつなぐ旅”を観たが、本作は言うなれば、“敦賀、5つの心をつなぐ旅”。 壊れかけたというか、壊れてしまった家族が旅で再生していく物語。

主人公俊介(緒形直人)は仕事では成功を納めていた。部長として手掛けた製品がヒットし、間もなく役員に昇進しようとしていた。 しかし、家族は崩壊していた。帰宅しても口もきかない妻(南果歩)、大学受験に失敗し、フリーターの息子、夜遊びを繰り返す高校生の娘。 そんな状況の中で、同居している父親(藤竜也)が認知症の症状を見せ始める。

俊介は父親が完全に分からなくなる前に父親が幼少期を幸せに過ごした思い出の地敦賀に連れていくことを思い立つ。 その旅は家族全員で行くこととした。 俊介の裏の思いは、父親の面倒をみるには家族の協力が必要だったこともあり、家族の絆をその旅で取り戻すことだった。

俊介が思っていたこと。
「妻があんなに薄情なやつとは思わなかった。」
「息子は大学にも行かなければ、仕事にも就かないどうしようもないやつ。」
「娘は何も考えてないし、親の言うことは何も聞かない。」
要するに俊介の思いは「俺は会社でこんなに頑張っているのに、家族はなんでこんなにひどいんだ!」だ。

しかし、父親の認知症騒ぎをきっかけに、俊介は徐々に気付かされていく。家族がそうなってしまった原因が自分にあったことを。 そして、俊介がそれに気付いたとき、家族の関係は徐々に修復されていく。


展開としては、「あれだけ冷え切った家族が2~3日の旅行で修復するなんて無理」とかケチをつけようと思えばつけられるが、家族や他人との気持のつながりについての示唆に富んでいる。

俺の心に一番響いた言葉は父親が言った
「人を褒めるには、相手をしっかり見つめなければ」
人と信頼関係を築くには、相手の良いところを認めることが重要だが、そうするにはうわべだけ眺めているだけではできないということ。 あるいはうわべだけ褒めても相手には響かないということだと思う。 俊介は家族を見つめていなかったのだ。

そして、一番肝腎な示唆は、信頼関係が崩れているときに「自分は悪くない」では何も解決しないということだと思う。 映画を観ながら、喧嘩の度にカミさんが俺に吐く捨てゼリフ「ええ、ええ、あなたは何も悪くない」がフラッシュバックしてしまった。 

自分は悪くないと思ったら、相手を直させようとしか考えない。 でも既に信頼関係が消えてしまっていたら、自分の言うことを相手は聞かない。 だから、問題は絶対解決しない。 「自分にも何か悪いところがあるんだろう」という謙虚さがあって初めて解決の可能性が出てくるのだろう。 

物語の中では、俊介の直接の罪は家族との時間を十分とらなかったことにある。 俊介はそれを「仕事なのだから、仕方ないだろう。」と悪いとは全く思っていなかったはずだ。 もし、それを「申し訳ない」と思っていれば、言動に現れて信頼は崩れなかったはず。

俺の場合は世間一般と比べ、十分に家族のための時間もお金もかけてきたとの自負があるので、「俺は完璧だろ!」と言いたくなるのだが、「俺は完璧」と思った瞬間から、崩壊が始まるのだと思う。


教訓めいたことばかり書いてしまったが、そればかりではない。 俊介は徐々に自分の過ちに気付くと同時に、ひどいと思っていた妻や子供が実はそんなことはないということが分かっていく。 その過程には心温まる。 特に、自分が気付いていなかっただけで、子供達はこんなにも優しい気持ちを持って成長していたと知る場面では、涙が止まらなかった。


お金もかかってなければ、笑いの1つも無い、旬の俳優も無い、とてつもなく地味な作品だけれども、俺の心には響いた。 邦画らしい邦画としてお気に入りの1本に加わった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 切ない
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