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トランセンデンス (2014)

TRANSCENDENCE

監督
ウォーリー・フィスター
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2.91 / 評価:1677件

AIの現実と未来の中で

  • Programer's-hi さん
  • 2014年7月2日 3時59分
  • 閲覧数 7640
  • 役立ち度 128
    • 総合評価
    • ★★★★★

昔、AIの開発に携わったこともある人間なので、可能な限り分かり易く現実と未来を解説してみたい。

そもそも、人工知能の開発は、人はどのように考えて判断するのかと言う分析から始まった。限定した場面において、人間らしい反応は分析可能であり、統計学的処理により条件による反応の優先順位は決められるものだ。だから、簡単な反応のみでOKな世界において、AI的処理を行うシステムは早くから実用化されてきている。

今、最も、この発想で進化しているのは、多分、googleだろう。驚くほど賢い検索エンジンもそうだが、数百区キロに及ぶAI処理による自動運転が可能であることを証明したという成果が最近では有名である。

コンピュータの内部では、未だに初期開発された手続き型処理が踏襲されている。Aと言う入力があったらBと言う出力を行う。この繰り返しである。AIは、この手続きをルールという名前で処理系から切り離した。「Aと言う入力があったらBと言う出力を行う。」をデータベース化したのである。ルールデータは、色々な条件と結びついて優先順位が計算される。条件を無数に数値化してデータベース化しておけば、あらゆる隅発的事象にも最適な回答を計算可能だというのが基本的な考えなのだ。

しかし、今、解説した方法論で、意思が発生するとは私は思っていない。例え、自己学習能力があったとしてもだ。私が関わっていた20年前は、それが傍から見たら意思的な反応に見えるとしてみ、それが自意識であるとは誰も思っていなかったのだ。

脳の膨大な入力に対する反応を全て数値化してデータベース化したら、それはその脳の自意識そのものではないかという研究がある。「全ての反応を数値化」の部分のハードルは高いが、理論としは魅力的ではあるが・・・

そんな現実の研究成果を全て下敷きにして、ハードルを越えた先にある近未来を予測すると言う、いわゆるハードSFを真正面から扱ったのが、この映画なのだと思う。

突っ込みどころが多いというレビューがある。

私の感想は、科学的知見に関しては恐れ入るしか無い、である。

例えば、ナノマシーンの自己増殖に関しても理論上は可能なのだ。DNAがどれ程の情報を持っているか想像すれば良い。DNAの機械的複製がナノマシーンの発想の基本なのだ。

エヴリンにナノマシーン・ウイルス注射し、エヴリンをアップロードさせるしか肥大化したウィルを止められないとする発想は正しすぎる対策なのだ。

この映画は、AIの現実と未来予測の成果をベースにしているが、AIが暴走したとか、機械対人間の戦いという図式化した未来を描いている訳では無いのが面白いと思った。

ウィルをアップロードし、究極のAIを完成させた推進力は、エヴリンのウィルに対する過剰な愛である。

AI化されたウィルの目的は、これまたエヴリンへの愛である。

エヴリンが望む世界を実現しただけなのだ。エヴリンが人を殺すことを望まないから、ウィルもそうしないのだ。

エヴリンが精神性は完全にウィルと同一でもが外見が違えば拒否することを学ぶと、自分の生前と同じ複製を作ろうとする。ナノマシーンの精度がこれ程であれば、これも容易に可能だろう。

※因みに、ソーラーパネルや機械がナノマシーンの自己修復機能で直ぐに直るのだけは「あり得ない」と突っ込んでいました。生態系の中で細胞分裂を促進するのとは意味が違うよね、ってやつです。

ウィルが生前、エヴリンの愛を繋ぎとめるのに、自分の複製を作って可能と思っていたとは思えない。人は生死を受け入れて生きているのだ。こんなところが、AI化されたウィルが自意識を持っていないという証明のような気がするし、AIの暴走と言われるところだと思っている。

しかし・・・本当に、自意識はどこから来るのだろう。

エヴリンの気持ちを尊重しウイルスを自ら受け入れ、自立型ナノマシーンに悪意を一切入れなかった行為は自意識と言って構わない気もしている。

このようなAIがテーマの話は、自意識とは一体なんなのか?愛とは何か?神の領域に踏み入る罪を意識しつつも「我思う故に我あり」と言う永遠の哲学的命題を思い返すのである。

この映画は、SFアクションでもSFサスペンスでも無い。ただのハードSFだ。そのた為に過剰に評価が低いような気がしているが、私には何度でも見たい傑作だった。

「Her」と連続で、同様なテーマの映画を見たが、「Her」の評価はそれこそ、星10個とも思える歴史的傑作ではあるが、この映画も何度も見てみたい映画であることも事実だ。私の基準では星5個に相当する。

詳細評価

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