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チョコレートドーナツ (2012)

ANY DAY NOW

監督
トラヴィス・ファイン
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4.24 / 評価:2809件

僕の家はどこ?ー 子が育つ環境

  • とみいじょん さん
  • 4級
  • 2020年6月8日 2時28分
  • 閲覧数 4687
  • 役立ち度 12
    • 総合評価
    • ★★★★★

「家に帰るのなら、道が違うわよ」が、こうラストに繋がるとは…。

「子育て」は「(親自身の)個育て」とも書くという。
 昔放送大学で「子が育つには母性と父性が必要だ。けれど、母性を男性が担ってもいいし、父性を女性が担っても問題ないという、(幼児を対象とした)調査結果がある」と聞いた。女の子の服やおもちゃを与えても、女性アイテムを好む人にはなっても、トランスジェンダーになるわけではないとも。
 そんなことを思い出した。

それを裏付けるように、ルディとポールの表情がどんどん変わってくる。
 むさいルディ。最初、女郎蜘蛛か蟷螂かという目力でポールを落とす。それが、ラスト、鏡の前の表情。ちあきなおみさんか?と目を疑った。無精髭はありつつも、酸いも甘いも生き抜きながらも微笑んでみせる深みのある女性にしか見えなかった。
 始めは、遊び用として接近してきたようにみえるポール。マルコに対しても他人事⇒ルディへのご機嫌取り。なのに、いつの間にか”父”そして”人生のパートナー”の顔になっている。飼い殺し状態から、ルディに触発されて、自分の主体性を取り戻していく。

「ゲイカップルが障害児を育てた」という1970年代の実話と、監督カップルが養子を迎えようとした実話をベースにした映画と聞く。

老後の心配からもしくは性的対象として、養子を迎えようとしているのではない。
 ルディがマルコを育てたいと希望する理由は「ひとめぼれ」以外には言葉では語られない。でも、表情で語ってくる。
 ”世間並”ではないマルコ。常に母からぞんざいな扱いを受けて隅にいるマルコ。ルディは自分を重ねたのではないだろうか。自分の性的嗜好をうまく隠し、社会に居場所を作っているポールに比べ、隠せない?ルディ。自分が親からやってもらいたかったことすべてをやってあげたかったのではないか。ありのままを認めることも含めて。

施設。
 物語の中の施設で思い出すのは、『赤毛のアン』・『あしながおじさん』・映画『この道は母へと続く』…
 今ではそんなに待遇も悪くはあるまい。とは思うものの…。
 漫画『凍りついた瞳』にもあるように、児童福祉は、日本なら18歳で打ち切り。昔の日本では、住むにも、就職するにも、保証人を求められたけれど、身寄りのないものは?1980年代には、それゆえに日雇い等での稼ぎ、木賃宿や路上で生活せざるをえない人々がたくさんいた。
 マルコの場合は?障碍者福祉的援助が続いたとしても、同じ人に支えられてなんていう望みはあまりない。物流の”物”みたいだ。その時々の制度に合わせて配送先が決まる。
 もちろん、ダウン症は短命な方が多いとはいえ、ルディ・ポールの方が先に逝く可能性はある。けれど、彼らなら、そのことも見越してマルコの居場所を用意しそうだ。映画『海洋天堂』のように。

 親になるということはそういうことだ。自分が寂しいからとか、見栄とかの為じゃなく、子のありのままを認めて、子と一緒に成長して、子が受け入れやすい準備をすること。
 衣食住が保障される場所があればいいという問題ではない。勿論それは最低限の必要だが。
 

裁判。
 法でできることもあるけれど、万能じゃない。
 「それを法に照らし合わせるとどうなのか」しか論議されない。なぜそんなことが起こったのか、最善の方法は何なのかを考える場所ではない。
 マクロな視点ではなく、その証拠が法的にどうかというミニマムな視点。痴漢・レイプ・DVの裁判でも、この小さな論点が、被害者に有利になる反面、セカンドレイプにもなる。
 法律では人生は図れない…。
 
 法は、私たちを守るもの。だから守らなければいけないと学んできたはずなのに。
 「正義なんてない。」「だから戦い続けるんだ」が心に突き刺さる。


 
ゲイカップルへの差別を描いた映画という人もいる。
 でも、私には、人を大切にするということはどういうことかを、胸に刻む映画だった。

 
とはいえ、
 世間の正義と、人の幸せのズレを際立たせるために、あえてそうしたのだと思うが、
 マルコが天使過ぎて、ダウン症特有の子育ての困難さがまったく描かれていない。
 マルコ・ルディ・ポールの家族がひたすらユートピアで、その幸せを壊そうとする輩との攻防という構図。
 だから、「うすっぺらく」にも見えてしまい、惜しい。

 それでも、この裁判を見ていると、素人ながら、そこの反論こうすればとかつい口出ししたくなる。熱くなる。ハッピーエンドにしたくて、いつまでもいつまでも逡巡してしまう。

小さな幸せを守ること。
相手のことを考えて行えば、こんなにたやすい。
なのに、こんなにも難しい。
それが何よりも悔しい。



(引用セリフは思い出し引用)

マルコ、ルディ、ポールの演技もいいが、マルコの母の固まった表情の中に見せる微妙なうつろいも見事。

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