テーマは良いが、あざとく単純すぎる物語
- gom***** さん
- 2021年1月26日 3時12分
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- 総合評価
2012年ならまだまだ扱いにくかったテーマに正面から切り込んだ、その意味ではとても意欲的で良心的な作品。
ただし、良いのはテーマと役者の演技だけ。
この物語を実話と誤解している人がいるが、実話のノベライズではない。
ただ、ゲイのカップルがダウン症の子供を育てたという話があった、というだけ。
マイノリティをあまりにも「かわいそうでしょ、善人でしょ」とアピールし、
世間(あるいは、ゲイのカップルの目線で見て不都合な人々)を、極端に、心ない、偏見に満ちた悪役として描き、
哀れなマイノリティの被害者っぷりを強調し、対立を深めて終わる。
最後の、「世間」の代表みたいな人たちに送られる、主人公からのメッセージは、お上品なようでいて、憎悪と皮肉で一杯のあてこすりでしかない。
あそこからは何も生まれない。
貧しいゲイの芸人は実はいい人で、虐待されている障害児に愛を与えた、そういう設定を否定はしないが、
それを可能にした条件が、空想SFレベルのご都合主義。
もしも、数日前に、都合よく、お金持ちで誠実で社会的地位の高い男性が、自分に一目惚れしてくれなかったら。
もしも、障害児の母親が血を分けた我が子を愛していたら。
主人公が本当に、どれほど子供を愛していたか、子供のために努力し、自分を捧げたか、というところが伝わらない。なんだかおもちゃにしていただけのような印象もある。
最後の、子供の死は、命の重みを伝えるというよりは、
ご都合のよい悲劇の演出上の都合のように思える。
「かわいそうなおとぎ話」で終わりの映画が、なんでこんなに評価が高いのか。
現実のマイノリティは、おとぎ話の中ではなく、不都合で厳しい現実の中で、
ほかのすべての人間と同様、長所も欠点もあるただの人間として、
もっともっと人間くさく、
あがき戦っている。
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